比べない、競わない子育てを伝える雑誌「ち・お」「お・は」 一人で追い詰められがちなあなたに贈ります

(2021年3月12日付 東京新聞朝刊)
 比較や競争に振り回されない子育ての価値を伝えたい-。その理念で30年近く発行を続けてきた子育て雑誌を読み継いでもらおうと、出版社が長年の愛読者から現役の子育て世代に雑誌を贈る企画に取り組んでいる。子育てに自信が持てず、孤立しがちな親を支えたいという思いが込められている。 
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比較や競争に親が振り回されず、子どもに向き合うことを伝えてきた「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」

親も参加 障害や不登校に寄り添って 

 この雑誌は、ジャパンマシニスト社(東京)が年2回発行する「ちいさい・おおきい・よわい・つよい(ち・お)」。主に乳幼児期の子育てをテーマに、小児科医の山田真さんと故・毛利子来(たねき)さんが中心となり、1993年に創刊した。

 子育て中の親が企画から参加し、専門家と意見交換しながら誌面を作るのが特徴。特に障害のある子や不登校の子を持つ親の悩みや不安に寄り添ってきた。編集代表は2019年から、脳性まひを患う小児科医の熊谷晋一郎さんが務める。

 1998年には小学生から思春期、自立する時期までの子育てを考える年2回発行の雑誌「おそい・はやい・ひくい・たかい(お・は)」も創刊。東京新聞で「子どもってワケわからん!」を連載中の岡崎勝さんも2誌の編集に関わり、計230号以上を出してきた。当初は3万部だった「ち・お」の発行部数は近年、3000部に減っているが、ロングセラーで累計10万部を超えた号もある。

「早起き、朝ご飯」できなくてもいい

 「ち・お」の創刊時から親の立場で編集に携わってきた同社員の松田博美さん(61)は「例えば、朝は早く起きた方がいい、朝ご飯は食べた方がいいと分かっていても、状況によってできないこともある。親を追い詰めるのではなく、専門家の側がそういう現実をちゃんと見ているかを問うてきた」と話す。読者からは今も、「分かりやすく、『親子へのまなざし』が温かい」「今の私の一部になる助けとなった大切な本」といった声が届くという。

雑誌のイベントで親子と交流する熊谷晋一郎さん(右)=2018年

 しかし、「子育てを巡る環境は好転したと言い難い」と松田さん。「子育ては親の自己責任とされ、レールから振り落とされないように、という親の恐れが強くなっている」とみる。

 しかもここ数年、経済的な理由などで定期購読をやめる読者が増えている。公立図書館や児童館などからも予算削減による購読停止が相次いだ。広告を取らず購読料だけで運営しているため、昨年秋には発刊継続の危機にも直面した。

余裕のない家庭へ 「あしなが」企画

 「何とか雑誌を届け続けたい」という編集部に、長年の購読者から提案されたのが「あしながブックサポーター」プロジェクト。祖父母世代となったかつての読者から、経済的に余裕のない現役の子育て世帯や、保育園や幼稚園、親子の居場所などに雑誌を寄贈する仕組みだ。

 第一歩として4月から年4回、希望した家庭や施設など300カ所に「ち・お」と「お・は」を贈ることを計画。そのための費用300万円を21日までクラウドファンディングで募っている。支援者がサポーターとして本の贈り手になる。小説「あしながおじさん」の主人公にちなんで「ジュディさん」と呼ぶ受け取り手も募集中だ。

 コロナ禍で外に出にくい今、いつも以上に子育て家庭は孤立しがち。松田さんは「長年『ち・お』『お・は』を読んできた方々は、親の皆さんにとっても頼りにできる人たち。双方の交流も生まれればうれしい」と話す。問い合わせはジャパンマシニスト社=フリーダイヤル(0120)965344=で受け付けている。

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