東京すくすく

東京新聞 TOKYO Web
発達・健康
夫婦関係・祖父母
仕事との両立
孤独・孤立
ひとり親
保活
親子関係
おでかけ
スマホ・ネット・SNS
学習・受験
いじめ
~0歳
1~2歳
3~5歳
6~9歳
10歳以上
妊娠・出産
保育園・幼稚園
働き方
教育・学校
くらし
支援
病気・事故
家族

〈親に寄り添う発達支援・上〉「ママ」と呼んでほしいのに… 暗闇でもがいた育児経験 同じ苦しみを救いたい

(2019年7月10日付 東京新聞朝刊)

息子(右)が3歳になるころの佐々木美華さん。療育施設に通い、「いいと言われることはすべてやろうとしていた」(佐々木さん提供)

同じようにもがく人たちを救いたい

 2メートルほど先から転がしたボールを、小さな体をめいっぱい使ってキャッチする2歳の男の子。「上手につかめるね」と保健師の佐々木美華さん(43)が声を掛けると、傍らの母親の顔がふわっとほころんだ。

 名古屋市北区で月1回、開かれるサロン「そーるきっず」。発達が気になるゼロ~2歳の子どもと親のためにと1月からスタートした。区内に住む佐々木さんが、子育て支援を掲げて始めた事業「Saule(ソール)」の一つだ。毎回2、3組の親子が訪れる。「自分と同じように、暗闇でもがいている人たちを救いたいんです」

出産直後に「普通と違う」 目の前は真っ暗

 2011年、流産を繰り返した末、四度目の妊娠でやっと息子を授かった。しかし、出産直後、「喜びが絶望に変わった」と言う。なかなか産声を上げず、酸素不足によるチアノーゼで顔は赤黒い。耳は通常より低い位置に、唇には口蓋裂(こうがいれつ)があった。

 「普通とは違う」。対面してすぐ、保健師として多くの新生児と接してきた経験から直感した。検査の結果、知的障害が見つかった。左半身にはまひがあり、将来も運動機能に遅れが残ると告げられた。すぐに死んでしまうのではないかという不安、どう育てたらいいのかという無力感…。目の前が真っ暗になった。一方で、障害を信じたくない思いもあって、気持ちは揺れ続けた。

息子をたたき起こし療育へ 鬼のようだった

 心を決めたのは息子が1歳になった時。必死に療育に取り組んだ。しかし、筋力が伸びない。言葉はおろか「あー」「うー」といった声も出ない。「かわいい」と思うより先に、「障害のない定型発達の子どもに近づけたい一心だった」。昼寝の時間でも眠る息子をたたき起こし、療育施設に通った。「自分でも鬼のようだった」と振り返る。

 地域の子育て支援センターでも追いつめられた。他の親子とのつながりや気分転換を求めて出掛けたはずなのに、定型発達の子が多く「やっぱりうちの子は発達が遅い」と傷つくだけ。行き場をなくし、次第に引きこもるように。「ママ」と呼んでほしいのに-。「なんでしゃべってくれないの」。イライラが募った。

3歳くらいまで診断がつきにくい発達障害

 そんなある日、家の中で額をぶつけた。痛くて涙が出たが、間もなく3歳になる息子は離れた場所で遊び続けていた。「『大丈夫?』もないの!」。思わず、手を上げた。それでも息子は笑っていた。怖さをうまく表現できない、発達の遅れがある子ども特有の症状だと分かったのは、ずっと後になってからだった。

 家族以外に悩みを打ち明けられる相手がほしかった。でも、定型発達の子とは悩むことが違う。療育施設で知り合う人は、自分の子どもで精いっぱいだ。加えて、発育にばらつきがある3歳ぐらいまでは発達障害の診断がつきにくく、どこに相談すればいいか分からない親も多い。「発達が気になる子の親が集い、気持ちをはき出せる場があったら」。そうした思いから、そーるきっずは生まれた。

 事業名の「Saule」はフランス語で柳の意。「柳が風にしなうみたいに、子どもたちがそれぞれのペースでしなやかに生きられるように」といった願いを込めた。自らの体験をもとに親たちと向き合う。「一人で悩み、孤立する人がいないように」 

 発達障害児の成長は、ゆっくりだ。同じ月齢の子と比べ、不安や焦りを抱く親は多い。周囲から孤立し、親子でひきこもったり、虐待に発展したりするケースも。育てにくい子の親を支えるにはどうしたらいいのか。発達の気になるゼロ~2歳の親子を支援する「Saule」の取り組みを紹介する。

〈次回はこちら〉「障害のある子が頑張ってるよ」の声に傷ついたから、伝えたいこと


元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年7月10日

すくすくボイス

この記事の感想をお聞かせください

いただいた投稿は、東京すくすくや東京新聞など、
中日新聞社の運営・発行する媒体で掲載させていただく場合があります。