教員異動は春休み前に教えて 東京は4月1日、埼玉は3月31日解禁 しっかりお別れができない
お世話になってもお礼が言えず「心残り」
「新年度まで異動が明かされなかったので、お世話になった先生にお礼やお別れができず、心残りだった」。江戸川区の中学2年、辻野まなカロリナさん(13)は区立小時代の先生の異動をそう振り返る。
4月の終わりに、異動した教員が来校する「離任式」はあった。ただ「異動先の学校の事情もあり、来られない先生もいた」。式では、教員が壇上で話して終わり。一人ずつ言葉を交わす時間もなかったという。
一方、進学した国立大付属の中高一貫校では、3学期中に教員が異動を伝えてくれる。中学1年だった昨年は、最後の日に一緒に写真撮影をしたり、教職を退く先生とは連絡先を交換したりもできた。「春休み前に発表があれば、『異動するかも』と不安のまま新年度を迎えずに済む」
先生も前倒し希望「一生会えないことも」
東京都内の公立小教員、瀬原徹郎さん(61)は、山口県で長く教員を務めた後、4年前に都の教員になった。「山口では3月末に発表され、31日にはお別れ式が行われる。子どもも先生も気持ちを伝え合って次に進めた」と話す。
だが東京ではそれがかなわない。「離れた地域に異動したら、担任をした子どもたちと一生再会できないことだってある。年度内にお別れの機会を持たせてほしい。感謝や未来への希望を語り合うことは、貴重な道徳教育だ」と発表時期の前倒しを願う。
神奈川・千葉は春休み前に伝える学校も
なぜ異動情報の解禁を前倒しできないのか。東京都教育庁は「年度末ギリギリまで内容の差し替えがある。間違った情報は提供できないので前倒しできない」と、今年も解禁日の変更はしない方針だ。埼玉県も例年、都と同様の理由で異動情報の解禁日を31日にしている。同県教育局は「教員への口頭での内示は春休み前には終えているが、個々の教員の急な病気や妊娠の判明などで、内示後も変更が生じうる」と話す。
一方、神奈川県では学校によっては、春休み直前に児童生徒に異動を伝え、年度内に別れの機会を設けている。千葉県は例年、情報解禁日から年度末まで数日余裕があるため、年度内に離任式を行う学校もある。本年度は25日に解禁予定。千葉県教委は「発表後の急な変更は生じうるが、子どもや保護者も含め、離任式の準備をする学校現場にメリットのある日程だと考えている」と説明する。
教育評論家の尾木直樹さんは「別れを丁寧にすることが新しい出会いや次の飛躍の準備となる」とした上で、「異動の有無が分からなくても、お世話になった教員には年度末に感謝の意を伝えて。そうすれば、気持ちを切り替えて新しい年度に臨める」と話す。
その後、東京都は要望に応え、教員異動の公表を年度内に前倒ししました。
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