「怒る指導」は顔色をうかがい、ミスを恐れ、チャレンジしなくなる 益子直美さんらが弊害指摘
吉岡潤 (2022年6月18日付 東京新聞朝刊)
怒らず、子どもたちの主体性を重視するスポーツ指導が注目される中、「怒らないコーチング、怒らない子育て」と題したパネルディスカッションが、横浜市戸塚区の湘南とつかYMCAで開かれた。バレーボールの日本代表で活躍した益子直美さん(56)ら3人のパネリストが指導のあり方を語り、会場とオンラインを合わせて約300人が聞き入った。
「監督が怒ってはいけない」バレー大会
益子さんは2015年、「監督が怒ってはいけない」と定めた小学生のバレーボール大会を始めた。自身が選手時代に怒られてばかりいて「バレーボールが大嫌い」になってしまい、「子どもたちに私のようにネガティブになってほしくない」と考えたからという。
「子どもは怒られると、人に言われなければ動けなくなり、ミスを恐れてチャレンジ精神をなくす。怒るのは言葉が足らず、手抜きの指導」と表現。主催した大会で子どもたちが「監督が怒らないので思い切ってやれた」「チャレンジできた」と話したと紹介し、「教え過ぎると、子どもたちから考えることを奪ってしまう。主体性は与えるのではなく、自分の中からわき出るもの」と述べた。
結果重視の指導者は、成長を待てない
4歳児~中学生が在籍する伊勢原市のサッカークラブ「伊勢原FCフォレスト」代表の一場哲宏さん(49)は「子どもにとっては楽しいということが主体的になる大前提」と語った。指導者が怒るのは「結果を重視し過ぎて、育つプロセスを楽しめずに待てないからだ」として、子どもを信じることの必要性を訴えた。
サッカーのJリーグクラブで普及・育成を担当し、大学教員などとしても豊富な指導経験を持つ池上正さん(65)は、怒る指導について「子どもが人の顔色をうかがうようになる。デメリットが大きい」と指摘。「納得できるように『諭す』ことが大切。指導者も勉強しないといけない」と説いた。
子育て中で、テーマに興味を感じて来場したという会社員の田添萌乃さん(36)は「待てないというのは自分もそうかなと思った。子どもはまだ1歳で、私は怒っている自覚がないけど、そうなるかもしれない。自主性を大事にしたい」と話した。
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