〈スポーツ虐待〉暴力が日常だった高校アメフット部 頭蓋骨がずれ、被害を訴えたらさらに報復が… 抑圧的な土壌を変えるには?

(2020年9月22日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

スポーツ虐待

 日本では今年、子どもへの体罰が全面的に禁止された。家庭での虐待に対する意識が高まる一方、スポーツの場では勝利至上主義や指導者・先輩を絶対視する人間関係のために、暴力や精神的な抑圧を容認する土壌が残る。すべての子どもたちがスポーツ虐待に苦しまず、競技を通じた成長の機会を保障されるのに必要なことは何か。子どもの権利を守ろうと活動する人たちの話から考えたい。

指導者から生徒、上級生から下級生

 「ミスをした時はたたかれたし、暴言など高圧的な指導が日常的だった」。東京都内の高校を今春卒業した萱原(かやはら)康介さん(18)が高校で所属したアメリカンフットボール部では、指導者から生徒へ、先輩から後輩への暴力が恒常的にあった。

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「暴力は当たり前、と感覚がまひしていた」と話す萱原康介さん

 3歳から中学校までサッカー一筋。ただ「全国大会に一度は出たい」との夢をかなえるため、高校では全国常連のアメフット部に入った。相次ぐ暴力にも「強豪チームはこんな感じなんだろう」と疑問を持たなかった。「大学進学にも影響を持つ指導者に逆らえない雰囲気もあった」

自分もまひ「グラウンドで見返せば」

 1年生から試合に出ていた萱原さんに、「生意気」と先輩も暴力をエスカレートさせていった。馬乗りで殴られたり、脳天に足を打ち下ろされたり。「暴力は当たり前、グラウンドで見返せばいいと思っていた。今思えば、自分もまひしていたし、スポーツの本質を理解していなかった」

 高校1年の秋ごろ、ひどい頭痛で受診すると、頭蓋骨の一部がずれていた。医師から「練習だけが原因とは考えられない」と伝えられ、初めて暴力被害を両親に打ち明けた。部や学校にも訴えたが、先輩には筒抜け。報復の暴力を受け、そのまま退部を余儀なくされた。「暴力がきっかけで、やりたかったスポーツをやめていく子がいることをもっと知ってほしい」

381人への調査で、19%が暴力被害

 10代の子どもたちが部活などで受けているスポーツ虐待の実態は、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が今春実施したオンラインアンケートでも明らかになった。25歳未満の381人のうち19%が何らかの暴力を受けていた。年齢や性別を問わず幅広い層の子どもたちが被害に遭った。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査で明らかになったm、スポーツ指導での虐待を訴える声

 加害者で最も多いのは指導者だが、上級生の暴力も多かった。HRW日本代表の土井香苗さんは「『子どもへの暴力は許されない』という社会規範にスポーツ界は乗り遅れていることが明らかになった」と指摘する。

 「子どものスポーツ指導の世界で虐待がなくならないのは、社会全体が激しい競争にさらされているから」。2018年にユニセフが公表した「子どもの権利とスポーツの原則」の起草に中心的役割を果たした山崎卓也弁護士はこう指摘する。「子どもに過度な期待をかける親の意識を変える必要もある。子どものスポーツの場を変えていくことは、大人がどういう社会を望むのかということにほかならない」 

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年9月22日

※後編は26日に掲載します。スポーツ指導の場で芽生えている変化や、虐待をなくすために必要な視点を伝えます。

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コメント

  • 匿名 より:

    プロではなくアマなのだからもっと楽しくやったら良いと思う。真面目に努力することは日本人の不幸な習慣ではないか。学生スポーツは体力向上と気晴らしが目的で勝利や上達を目指すべきではない。全国規模の大会は良くないのでは。

  • 匿名 より:

    体罰をする人は、それが正しいと信じてやっているケースがほとんどです。なぜなら自分が体罰を受けてきて現在に至っているからです。体罰は戦前の軍国主義の名残であり、連鎖を断ち切っていかなければならないものです。今の世代に体罰の非道徳性を訴えていくことは、未来の社会に体罰がなくなる希望となるはずです。

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