〈奥山佳恵さんの子育て日記〉32・いっしょにいれば一番わかる「みんないろいろ」

(2022年6月24日付 東京新聞朝刊)

小雨が降るなか、カッパを着てでも遊ぶ次男。クラスのお友達にブランコを押してもらってご満悦

悪意はない、率直な「どうして?」

 「また、ああああそびにききき、きてね」

 次男・美良生(みらい)は全身に力を入れ、ふりしぼるようにお友達の帰りを見送った。丸1日を初めていっしょに過ごした年下の男の子。次男に対し、他のお友達とはちょっと違うという違和感をずっと抱えていたのだろう。別れ際の吃音(きつおん)が決定打となって、疑問を私に投げかけてきた。「美良生くんは、どうしてこういうしゃべり方をするの?」

 極めて率直な質問。他意も悪意もないのはわかってはいたけれど、なにせ別れ際で、私の持ち時間は数秒だった。園児にわかる単語で簡潔に答えなくては。アタフタしながらようやく口にできたのが、「どうしてなんだろうね?」。まさかの問い返し。われながらなんとも情けない。

 挽回のチャンスはすぐにやってきた! 数日後、またこの子に会うことに。時間をかけて、じっくり答えを考えた。そうだ、こんなふうに言ったらわかってもらえるかな。

 前回と同じ別れ際のタイミング、私は彼に投げかけた。「キミの好きな色はピンクだよね。それと同じで、ああいうしゃべり方をするのが美良生くんなんだよ。みんないろいろでいいんだよ」。どうだ? 伝わったか? わかったようなわからないような表情の後、「ふーん」とニコッと笑ってくれました。

クラスのお友達は「それが美良生」

 その数日前、ドキドキの学校行事の宿泊体験から、次男は戻ってきた。本人の口からは「楽しかった」以上の情報が得られなかったので、後日遊びに来てくれたクラスのお友達に次男の様子を一人ずつ発表してもらった。「すぐ寝たよ」「お菓子食べて先生に怒られてた」「転んで泣いちゃったから僕がおぶって歩いた」―。

 最後の発言は衝撃的。なのにおぶった友達当人は「聞かれたから言ったけど」程度のサラッとした様子。なんてことないのだ。これまで5年間、いっしょに過ごしてきた美良生は、特別じゃない人でいさせてもらっている。当然、みんな美良生の吃音も気にとめていない。「それが美良生だから」が浸透している。

 遊びに来てくれた小さなお友達も、美良生と過ごす時間が増えれば増えるほどわかってもらえるんじゃないかな。「いっしょにいる」が一番わかる。「みんないろいろでいい」と思えれば、ホッとして、自分自身も救われる気がするのだ。 (女優・タレント)