小学生発案「さんぽセル」 批判した大人は「重すぎるランドセル問題」を反省すべき
キャリーバッグになる! 荷重を9割軽減
「さんぽセル」はアルミ製のフレームで2本のスティックの先にキャスターが付いた商品で、ランドセルをキャリーバッグのように手で引くことができ、体感荷重を約9割軽減する。栃木県在住の小学生ら6人のアイデアを「悟空のきもち THE LABO」が協力して商品化。4月に販売開始すると、約3000件の注文が殺到した。
だが、ニュースになるとネットでは批判的なコメントが相次いだ。開発に携わった大学生の岡村連太郎さん(21)は「小学生は1週間くらい落ち込んでいた。このままつぶされるのはまずいと思った」と振り返る。
「そもそも…」小学生たちが的確な反論
同社は5月下旬、さんぽセルの生産と普及のためクラウドファンディングを開始。批判への反論も紹介した。体のバランスが悪くなり、体調が悪くなるとの批判に、「それは重いランドセルでなる『ランドセル症候群』って言われている病気です。僕たちは、それを解決しようとしてるんです」。ランドセルは後ろ向きに倒れたときに頭を守る機能があるとの指摘に「そもそもランドセルが重いから後ろに転ぶんじゃん!」と返した。
「重いランドセルを見て見ぬふりをしてきた大人が、自分たちで解決した子どもを批判するのはおかしい」。岡村さんは小学生の思いをこう代弁する。
寄付と同時に、さんぽセルをもらってくれる人も募集。「校長先生」「市長」「文部科学大臣」「内閣総理大臣」にも呼び掛けている。同社によると、現在、3600台分の寄付が集まり、校長4人、市長1人から提供希望があった。末松信介文科相は、14日の会見で「注文が殺到しているので様子を見守りたい」と反応した。
平均4キロ 教科書1.7倍、置き勉禁止
重すぎるランドセルは全国的な問題だ。学校用品の企画・製造・販売会社「フットマーク」は昨年、小学1~3年生とその保護者1200人にアンケートを実施。「常に重いと感じる」「頻繁に感じる」「たまに感じる」との回答が9割を超えた。重さの平均は3.97キロ。重さが原因で通学を嫌がる割合は2.7人に1人、3.1人に1人は、肩や腰、背中などの痛みを訴えている。担当者は「重いランドセルで心身の不調を引き起こす『ランドセル症候群』が心配だ」とする。
同社によると、小学生の教科書の合計ページ数は過去15年で1.7倍に増加。近年は、ICT(情報通信技術)教育の一環で、パソコンなどを持ち帰ることもある。だがアンケートでは、半数近くが、自宅で使わない教材を学校に置いておく「置き勉」が禁止されていると回答した。
米国では「体重の1~2割以内」指針も
文科省は2018年に教育現場に生徒・児童の所持品の重さや量について改善を求めている。担当者は「さんぽセルが問題提起になった。学校ごとにばらつきがあるのは事実で、改めて対応を求める」とした。
教育評論家の尾木直樹さんは「思考停止した大人の意見にも、子どもが知恵を絞って反論した。批判は事実に基づかないものも多く、残念だ」と指摘する。
重いランドセルが解消されない背景について「重い荷物が子どもの身体に与える影響を軽視しすぎている」と説明。「米国では体重の1~2割以内というガイドラインがあり、日本でも早急にガイドラインを打ち出すべきだ」と訴えた。
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