小学生発案「さんぽセル」 批判した大人は「重すぎるランドセル問題」を反省すべき

山田祐一郎 (2022年6月24日付 東京新聞朝刊)

ランドセルをキャリーバッグのように運べる「さんぽセル」(「悟空のきもち THE LABO」提供)

 「ランドセルが重すぎる」。多くの小学生が抱える悩みを解消しようと、小学生自らが、ランドセルに装着するキャスター「さんぽセル」を発案、発売したところ4カ月待ちの人気商品となった。なのに、インターネット上では「みんな我慢したんだから」などと大人たちから批判が。これに対する小学生の的確すぎる反論も話題になったが、そもそも重くさせている大人の方が反省すべきでは。

キャリーバッグになる! 荷重を9割軽減

 「さんぽセル」はアルミ製のフレームで2本のスティックの先にキャスターが付いた商品で、ランドセルをキャリーバッグのように手で引くことができ、体感荷重を約9割軽減する。栃木県在住の小学生ら6人のアイデアを「悟空のきもち THE LABO」が協力して商品化。4月に販売開始すると、約3000件の注文が殺到した。

 だが、ニュースになるとネットでは批判的なコメントが相次いだ。開発に携わった大学生の岡村連太郎さん(21)は「小学生は1週間くらい落ち込んでいた。このままつぶされるのはまずいと思った」と振り返る。

「さんぽセル」を発案した小学生たちと、開発に携わった岡村さん(右から2人目)=栃木県内で(「悟空のきもち THE LABO」提供)

「そもそも…」小学生たちが的確な反論

 同社は5月下旬、さんぽセルの生産と普及のためクラウドファンディングを開始。批判への反論も紹介した。体のバランスが悪くなり、体調が悪くなるとの批判に、「それは重いランドセルでなる『ランドセル症候群』って言われている病気です。僕たちは、それを解決しようとしてるんです」。ランドセルは後ろ向きに倒れたときに頭を守る機能があるとの指摘に「そもそもランドセルが重いから後ろに転ぶんじゃん!」と返した。

 「重いランドセルを見て見ぬふりをしてきた大人が、自分たちで解決した子どもを批判するのはおかしい」。岡村さんは小学生の思いをこう代弁する。

 寄付と同時に、さんぽセルをもらってくれる人も募集。「校長先生」「市長」「文部科学大臣」「内閣総理大臣」にも呼び掛けている。同社によると、現在、3600台分の寄付が集まり、校長4人、市長1人から提供希望があった。末松信介文科相は、14日の会見で「注文が殺到しているので様子を見守りたい」と反応した。

平均4キロ 教科書1.7倍、置き勉禁止

 重すぎるランドセルは全国的な問題だ。学校用品の企画・製造・販売会社「フットマーク」は昨年、小学1~3年生とその保護者1200人にアンケートを実施。「常に重いと感じる」「頻繁に感じる」「たまに感じる」との回答が9割を超えた。重さの平均は3.97キロ。重さが原因で通学を嫌がる割合は2.7人に1人、3.1人に1人は、肩や腰、背中などの痛みを訴えている。担当者は「重いランドセルで心身の不調を引き起こす『ランドセル症候群』が心配だ」とする。

教科書のページ数も増え、ランドセルの中身は重くなっている

 同社によると、小学生の教科書の合計ページ数は過去15年で1.7倍に増加。近年は、ICT(情報通信技術)教育の一環で、パソコンなどを持ち帰ることもある。だがアンケートでは、半数近くが、自宅で使わない教材を学校に置いておく「置き勉」が禁止されていると回答した。

米国では「体重の1~2割以内」指針も

 文科省は2018年に教育現場に生徒・児童の所持品の重さや量について改善を求めている。担当者は「さんぽセルが問題提起になった。学校ごとにばらつきがあるのは事実で、改めて対応を求める」とした。

 教育評論家の尾木直樹さんは「思考停止した大人の意見にも、子どもが知恵を絞って反論した。批判は事実に基づかないものも多く、残念だ」と指摘する。

 重いランドセルが解消されない背景について「重い荷物が子どもの身体に与える影響を軽視しすぎている」と説明。「米国では体重の1~2割以内というガイドラインがあり、日本でも早急にガイドラインを打ち出すべきだ」と訴えた。

コメント

  • 良いことだ。私の勤めていた高校でも教材(特に資料集や辞書の類)の多さは問題になっているので、これとは別に、全ての小中高で個人ロッカーの設置を許可頂けるよう、各自治体は動いてくれないだろうか。私の通って
    元教員 男性 50代 
  • 私が小学生のときに通学路に坂道がすごいあって、すごくつらかったです。それに+教科書やドリルやタブレットが入ったランドセルって、たまったもんじゃなかったですよ。 中学生になった今も思ってるんですけ
    中二です。 女性 10代