こども基本法で「意見を聴くこと」が国と自治体の義務に 子どもが声を上げやすくするには?
「いけんぷらす」既に3000人が登録
小倉将信こども政策担当相は4月末の記者会見で「(子どもや若者と)一緒に社会をつくり上げていく大切さについて理解を広げていきたい」と強調した。
政府は3月末、小学1年~20代を対象に意見を伝えたい人の募集を開始。「こども若者★いけんぷらす」と題した事業で、既に約3000人が登録した。
目標は1万人で、意見聴取は対面だけでなく、オンラインやSNSも活用する。同庁職員が直接、児童養護施設や児童館などに出向いて聴くことも想定している。
年間10~20テーマ 夏ごろから実施
意見を聴き始めるのは夏ごろの見通しで、こども家庭庁が各省庁に政策テーマを募集中。年内に決定する「こども大綱」をはじめ、年間10~20のテーマを取り上げる見込みだ。
こども家庭庁によると、欧州では数千~数万人の子どもたちの声を聴いて国の戦略に反映させた事例がいくつもあるが、日本では初めての取り組みになる。
豊島区の「子ども会議」で見えた課題
国に先駆け、子どもたちに政策への意見を聴こうと東京都豊島区で3年前に始まった「としま子ども会議」の運営に携わるNPO法人「SLC」の幅野裕敬理事長は「子どもたちが意見を言いやすい環境をつくることが大事」と助言する。
幅野氏は意見を聴く際、
- 自分の言葉や気持ちを大事に
- 人の意見は否定しない
- 意見を言うときは自分の提案とセットで
―の3点をルールとして子どもたちに示す。意見を言うのに時間がかかっても、可能な限り待つことを心がけ、率直な発言を引き出してきた。
課題もある。「子どもたちのアイデアや意見を区政に反映するのが難しい」(豊島区の担当者)といい、まだ直接的に事業につながった例はないという。本年度から、改定時期の近い計画や施策からテーマを選ぶなど、工夫を凝らしている最中だ。
こども家庭庁が全国規模で行う意見聴取、政策反映、フィードバックの仕組みが定着するまでには試行錯誤も予想される。
こども大綱とは
こども基本法に基づき、子ども施策に関する基本方針や重要事項を定めるもの。既存の3大綱(少子化社会対策大綱、子ども・若者育成支援推進大綱、子どもの貧困対策に関する大綱)は一本化して廃止する。子どもの意見を聴いて年内に閣議決定する。
大人も変わらなければ 林大介・浦和大准教授に聞く
子どもを「お客さま」扱いしない
子どもに関する施策はこれまで、国でも自治体でも大人側の思いで進める部分が多かった。当事者の子どもを「お客さま」扱いせず、声をきちんと政策に反映させていくことは非常に大事で、大きな動きだ。
例えば長野県では「静かに遊んでほしい」との大人の声などを機に公園廃止に至る問題も起きた。大人の公園像を追求するのではなく、利用する子どもたちの声を聴くべきだ。
子どもたちには、大人の目を気にしたり、上手に言えないからといって遠慮したりせずに、何でも思ったことを話してほしい。大人も、そうしやすい雰囲気や環境をつくるよう努力して変わらなければいけない。家庭でも学校でも、社会や政治の動きを意識して意見を交わす場面を増やしていけるといい。
意見で社会が動くと実感できれば
大切なのは子どもたちへのフィードバックだ。聴いた意見をどんな形で政策につなげていったのか、なぜつなげられなかったのかを分かりやすく説明する。そうすれば、政治に対する信頼や期待が上がっていく。
統一地方選での若者の投票率は低調だったが、日常的に自分の声を伝える必要性を感じてもらうのが重要。例えば東京都江戸川区では、中学生時代に制服を選べず苦痛を感じていた高校生の声を機に、制服選択制が広がった。意見を伝えることで社会が動き出すと実感できれば、自然と投票活動にもつながっていく。
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