中学校の制服リユースをマッチングする「制服バンク」柏市が導入 背景に柏特有の「学校ではジャージ」文化

林容史 (2023年6月16日付 東京新聞朝刊)

 中学入学を控えた子どもがいる家庭の負担を少しでも減らそうと、千葉県柏市は、不要になった中学の制服を必要とする新入生の元に届けるリユース、マッチング事業「制服バンク」をスタートさせた。過疎地とは正反対の人口43万人を超す、首都圏屈指の衛星都市だが、全市的に呼びかけて事業に取り組む背景には柏特有の“制服文化”がある。

平均3万5000円 負担を軽くするには

 柏市教育委員会によると、学生服やセーラー服など中学の制服一式をそろえるには、平均3万5000円かかる。さらに冬服と夏服が必要な学校もあるほか、通学用のかばんや自転車、体操服、文房具などを用意する家庭の負担は軽くない。

 柏市が、これまで制服のリユース事業に踏み切れなかった事情の一つには、制服の多様性がある。柏市内には市立中学が21校あり、学ランはともかく、セーラー服は襟の形や白線の数、ジャンパースカートかセパレートかなどで異なり、いわば「21色ある」状態だ。

 このため、学校ごとにPTAが中心になり、保護者会やバザー、譲渡会で制服を融通し合ってきた。しかし、仕事が忙しくて譲渡会に参加できないなど、必ずしも困っている家庭に制服が行き渡るわけではなかったという。

 そこにコロナが直撃し、ここ数年は譲渡会自体が開けなくなった。柏市教委は、市全体を網羅するマッチング制度の導入に向け、昨年6月ごろから検討を進めていた。

登校後に着替えるからあまり傷まない

 柏市内の中学校では、登下校時こそ制服を着用するが、校内ではジャージに着替え、終日、授業を受けるという不文律がある。このため、3年間着続けた制服でも、ほとんど傷みがない。兄弟や先輩、親戚から制服を譲ってもらうケースが多く、以前から「お下がりは当たり前」という文化が広く根付いている。

 柏市教委は、制服をきれいにして新入生たちに届けるため、提携するクリーニング事業者も探した。すると、旧沼南町(現柏市)で創業した「ローヤルクリーニングセンター」(本部・白井市)が「会社を育ててくれた地元に貢献できれば」と無償で協力を申し出た。グループ会社の「グローバル」と合わせ、市内の24店舗で、制服を預かってクリーニングし、希望者に手渡す。

1000円分の図書カードがもらえます

 柏版「制服バンク」の仕組みはこうだ。制服を譲りたい人は柏市のウェブサイトの「柏市制服バンク」のページから、申請フォームで制服情報を登録。学校名、学ランやセーラー服などの種類、サイズ、状態のほか、写真も5枚まで掲載できる。

 譲り受けたい人との間でマッチングが成立すると、柏市教委から連絡があり、希望する提携クリーニング店に直接持ち込む。登録などに手間がかかる代わりに、1000円分の図書カードがもらえる。

就学援助家庭を優先 12月に一般公開

 制服は、柏市の就学援助を受けている家庭から優先的に譲渡する方針で、対象世帯には10月下旬から通知する。市立中学の1学年当たりの生徒数3300人前後のうち、10%の約300人が対象になる見込み。12月には一般にも在庫情報を公開する予定だ。

 柏市教委は初年度、来春の新入生のために100着のマッチングを目指す。学校教育課の野本佳奈さんは「たくさんの思い出が詰まっていて、捨てられずにいた制服を大切に着てくれる次代の子どもたちに引き継いでほしい。SDGs(持続可能な開発目標)に向けても有効な取り組みになる」と協力を呼びかけている。

 問い合わせは柏市学校教育課=電話04(7190)5779=で受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年6月16日

コメント

  • 田舎に住んでいるので、直接譲り受けたり、使っていただいたりしていました。でもこういった取り組みはすばらしいですね。入学時に購入した学生服はサイズ的に三年間着るのは難しいです。
    匿名 --- --- 
  • PTAに持って行こうと思いながら、卒業するとなかなか学校まで足を伸ばす機会もなく、近所に適齢期の子どももおらずズルズル数年が過ぎてしまい、こういう取り組みを知って渡りに舟です。しかもクリーニングまでし
    ルゥ 女性 50代