「インクルーシブ学童」で障害のある子もない子も共に成長 障害福祉サービス報酬改定の柱に
自然によだれをふいてあげるように
平日の放課後、宿題をした後、おやつのハヤシライスとアイスクリームを食べながら約20人の小学生はにぎやかだ。神奈川県横須賀市の学童保育「sukasuka-kids(すかすかキッズ)」は、みんな一緒に、という意味のインクルーシブ学童を掲げる。定員31人のほぼ半分が発達障害や知的障害がある子というが、どの子なのか区別がつかない。
当初は、おもちゃの取り合いなど障害児と健常児のトラブルがあった。お互いが思っていることを言葉にして伝え合うよう、指導員が丁寧に繰り返し理解が進んだという。
「障害児に『よだれが汚い』と言っていた子が、自然によだれをふいてあげている。障害の有無を超えた自然な振る舞いを子どもたちから教わる」と責任者の小林博子さん(49)。小3の長女(9)と発達障害がある小1の長男(7)を通わせている母親(39)は「長男にとっては過ごしやすい環境。こんな場所が増えることで世の中が変われば」と話す。
障害児にも健常児にもプラスになる
この学童保育は末娘(13)に障害がある五本木愛さん(49)が2018年4月、障害児の母親たちとつくった。障害児は放課後等デイサービス、健常児は学童保育と分かれ、障害児の受け入れを拒む学童もある中、「一緒に過ごすことが障害児も健常児にも、育ちにプラスになる」と考えたのがきっかけ。2021年春には未就学児のインクルーシブ一時預かり保育事業も始めた。
五本木さんは「健常児にとっては相手のことを想像し、思いやる心が育つことは大きな財産。一方、障害児は小さな頃から多彩な人と関わる経験が生きていく上で鍵となる」と語る。
今回の報酬改定では、放課後等デイサービスなどが、障害児が学童保育に通うよう取り組んだ際に、障害福祉サービスの報酬として加算を広げる案も議論された。「障害児が健常児と交流する地域の活動に参加したり、学童保育を利用したりした場合にも報酬がついたら」と五本木さん。
放課後デイと学童が連携してほしい
全国児童発達支援協議会(東京)の北川聡子会長(63)は「障害のある子もない子も互いに理解し合って友だちになれるように、先生が間に立つ意識や取り組みが必要」と指摘。協議会は保育所や幼稚園に在籍する障害児と家族を支えるため、専門知識を持った人が訪問する「保育所等訪問支援」の機能を高めた「地域こども発達サポートセンター」の創設も、今回の改定に合わせて提唱した。
2022年9月、国連障害者権利委員会は、すべての障害児にインクルーシブ教育を確保するため合理的配慮を保障するよう、日本政府に勧告した。認定NPO法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議の常任委員岡本直樹さん(41)は「勧告を生かし、小さい頃から同じ環境で過ごしたり学んだりすることが共生社会への第一歩。放課後等デイサービスと学童保育がうまく連携して」と話す。
コメント