〈奥山佳恵さんの子育て日記〉46・ダウン症の次男が通常学級で過ごした6年を振り返って

(2023年11月22日付 東京新聞朝刊)
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テストの裏側には大好きなお友達の名前がいっぱい書かれていて、次男の気持ちもあふれていた

奥山佳恵さんの子育て日記

お友達が自然に身につけてくれた優しさ

 次男は現在小学6年生。ダウン症という知的障がいがありながら、この小学校生活の6年間をついに、通常学級で通い切ろうとしています。振り返ってみての感想を一言で言うなら「通常学級でよかった」。いじめられることもからかわれることもなかった。クラスのお友達は、字も書けず言葉も不明瞭な次男をそのまま丸ごと受け入れてくれました。

 「お互いの違い」を感覚的にわかってもらえたのは、障がいという概念が芽生える前の出会いだったおかげだと思っています。自宅にお友達が遊びに来てくれるようになったのは4年生の頃。最高で15人ほどの子どもたちが集まり大騒ぎとなりました。よく遊んだのは「暗闇かくれんぼ」。人気の秘密は家の中のどこに隠れてもいい、という「一棟貸し」ではないかと思っています。おかげで子どもたちが帰った後は、まるで嵐が去ったがごとくの惨状で片付けこそ大変でしたが、クラスのお友達と楽しそうに遊ぶ次男の笑顔が見られる喜びには代えられませんでした。

 5年生の時の初めての修学旅行では、お友達が「いろいろなことができない次男」のフォローをすることが当たり前という関係になってくれていたおかげで、助けてもらえました。お世話になっている側から言うことではありませんが、お友達が自然と身につけてくれた次男への優しさは、授業で教えてもらえること以上のものだと思います。世の中には支えが必要な人がいるということを知った子どもたちが、大きくなって作ってくれる世の中を早く見てみたいと思いました。

6年生になり距離が… 中学校の選択は?

 そして最高学年となった6年生。ここにきて感じているのは子どもたちと次男との距離。これまでお友達といっしょに下校してきたのに、最近はずっとひとり。きっと寂しいだろうに、笑顔でいるから切ない。先日、学校でのイベントに参加し、次男とお友達の様子を見ていたら、お友達が成長してしまったことに気づきました。嫌っているわけではないけれど、目線を下げて次男に気をかけてくれる子どもたちの数は減りました。

 先日、次男が持ち帰ってきたテストの裏側を見たら胸が張りさけそうになりました。お友達の名前がいっぱい書いてあったのです。次男は、お友達のことが大好きです。このような状況で、これから進む中学校の就学先は通常学級と支援学級と支援学校の、どちらを選択したらいいのだろう? 悩むだけ悩んで出した結論には正解も不正解もない、ということだけを信じています!

奥山佳恵(おくやま・よしえ)

 俳優・タレント。2011年に生まれたダウン症の次男を育てる。長男はすでに成人。

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