八丈島に特別支援高の分教室 島しょ部で初、4月から 障害ある子に学びの場 インクルーシブ教育にも
三宅千智 (2024年2月15日付 東京新聞朝刊)
伊豆諸島・小笠原諸島で初となる特別支援学校高等部の分教室が4月、八丈町で正式にスタートする。障害がある島内の子どもたちは中学までは地元の特別支援学級に通うが、高校進学時の受け皿がなかった。新たに学びの場が生まれたことに保護者からも歓迎の声が届いているという。
モデル事業で「多様性や共生の理解促進」
分教室は、八丈町で唯一の高校、都立八丈高内に置く。同高の多目的用途教室などを使い、知的障害のある高校生を受け入れる。
2021年度から3年間、モデル事業として設置し、2023年度は1~3年の7人が在籍。国語や数学などの教科以外にも、将来の仕事に役立つよう窓ガラスの清掃や七味唐辛子づくりなどを学んできた。八丈高の生徒とも体育祭や一部の授業を合同で行っている。
モデル事業の効果を検証する有識者の検討委員会は「障害のある子どもたちが自己の生活する地域で教育の機会が得られるようになった」とし、正式設置を提言する報告書を1月にまとめた。八丈高生と交流がある点も「多様性や共生社会の理解促進につながっている」と評価した。
これまでは島外の支援校に進学していた
東京都教育庁の特別支援教育課によると、都内島しょ部9町村で障害のある生徒が高校進学を望む場合、自宅を離れて寄宿舎に入り、都立八王子特別支援学校(八王子市)など島外の学校に通うケースが多い。隔週末の帰宅時など送迎の負担が大きいとして、保護者から改善を求める声が教育庁に寄せられていた。
9町村のうち、八丈町の知的障害特別支援学級の2023年度の在籍者数は小中合わせ11人で、他の町村(0~5人)よりも多いことから、教育庁は最終的に設置を決めた。保護者へのアンケートでは「負担が減った」という意見が大半だった。
普通高校の中に特別支援学校を設置するのは都内で初という。担当者は「インクルーシブ教育の観点でも有効と分かった。島しょ部の他の地域にも、八丈町の分教室での取り組みを共有したい」としている。