小倉こども相インタビュー 子育てしやすい社会にするため「わからない」を大切に

今川綾音、浅野有紀
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インタビューに笑顔で答える小倉将信こども政策担当大臣(布藤哲矢撮影)

 東京すくすくは2023年8月30日、小倉将信こども政策担当大臣にインタビューしました。政府が「こどもまんなか」政策を進めるために設置した「こども家庭庁」の発足から5カ月。これまでの実績や今後の見通し、そして小倉大臣が視察など子どもや子育て世代と触れ合う中で気づいた点などを聞きました。

きめ細かい支援には一元化が必要だった

ーこども家庭庁ができたことの意義、進めてきた取り組み、実現しようとしていることについて教えてください。

 こども家庭庁には、さまざまな役割がありますけど、使命としては大きくわけて2つあると思います。少子化が進行して子どもの人数が減っていますが、児童虐待の相談件数、いじめの件数や不登校児童の人数、さらには発達支援を必要とする子どもの数、いずれも増えています。

図解 こども家庭庁と他の省庁との関係

 誰ひとり取り残すことなく、きめ細かい支援をするためには、まず政府が(厚生労働省や内閣府に分かれていた)子どもに関する施策を一元化しなくてはならない。その一元化するための司令塔として、こども家庭庁がしっかりと使命を果たす必要があります。1つの例として、議長として「こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議」を開催し、緊急対策プランをまとめました。子どもに関する議題について、一元的な役割を果たしてこられたのではないかと思います。

 もう1つは、子どもや若者の視点に立った政策を行うこと。子どもの権利条約にも明記されている子どもの意見表明権を尊重しつつ、まさに子どもや若者がやってほしいと思うような政策を実行する使命があります。こちらについては「こども若者★いけんぷらす」事業という、最終的には1万人の子どもや若者からの意見を聴く取り組みを始めました。

 単に多くの方から意見を聞くだけではなく、どういったことを議論するか、どういった形で議論するかという点についても、「ぽんぱー」という運営委員会を立ち上げ、子どもと若者とともに検討するプロセスを始めました。

疑似妊婦体験「わからない」がわかった

ー政策を前に進めるために子育て世代のほか、子どもに直接関わっていない人への発信も必要だと思います。大臣は以前、疑似妊婦体験をしていました。当時は批判的なコメントも多くありました。率直なところ、いかがでしたか。

 一番の収穫は、やっぱり、わからないことがわかったということです。

 妊婦体験をしたときには、多くの妊産婦の方から厳しい意見をいただきました。体重が増えて動きづらくなるだけではなくて、精神的な落ち込みもあるし、身体的な不調も押し寄せてくる。私が2、3日、体重の増加だけ体験をしても、本当のつらさはわからない。そういう意味では、どんなにわかろうとしても立場が違えばわからないこともたくさんあるんだという、謙虚な気持ちで政策に当たることが重要だと思います。

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2021年4月、自民党青年局が開いた「疑似妊婦体験」で7.3キロの重りが入ったジャケットを着る小倉将信氏(左)ら=東京・永田町で (木口慎子撮影)

 ご案内の通り、私は子育て経験がありません。ただ子育て経験がある方でも、障害児を持つ保護者の方の気持ちはわからないかもしれないし、児童虐待を経験した子どもの気持ちもわからないかもしれない。人には自分で経験しきれないことがあります。常に自分はわからないんだということを発射台にした上で、できる限り多くの当事者の意見をしっかり聴いていくことを心がけたいと考えています。

安心感…経済面も精神面もサポートを   

ー具体的には。

 子育て当事者、子どもを持ちたいという希望を持っている方々が安心感を得られるような政策を実行しなくてはなりません。お話を聞くと、子育てが大変、大きなプレッシャーがかかっているのは事実。それらを1つずつ取り除き、子どもを持ちたいと思っている人が持てるような状況をつくるのが政府の役割だと思います。

 また経済的な負担に関しては、児童手当の拡充などで経済的なサポートをしていくことも重要ですし、あるいは身体的な負担に関しましては、伴走型支援、これからつくろうとしている子ども誰でも通園制度といったもので切れ目なくサポートしていくことも重要だと思っています。

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「社会全体で子育て世帯に優しいアクションを」と語る小倉政信こども家庭担当大臣(布藤哲矢撮影)

 さらには精神的な負担をなくしていくことも重要です。ベビーカーを押していて周りから舌打ちされてしまうとか、家族旅行で子どもが大きな声をあげるたびに肩身の狭い思いをする、というようなことが続いてしまうと、子どもを持つことをあきらめようとか、2人目、3人目難しいね、というふうになってしまう。社会全体で、独身者、子育てを終えた方、それぞれの立場から、子育て世帯に優しいアクションをみんなでやっていこうということをお願いしています。

 週末出張で新幹線に乗っていましたところ、子連れの方が同じ車両にいらして、子どもが声をあげて喜んでいると、親も周りを気にしてずっと子どもに注意していました。担当大臣になって、楽しい旅行のはずが注意され続ける子どもも決していい思いをしないのではないか、と思うようになりました。その場では、そんなに注意しなくても大丈夫ですよ、われわれは気にしてませんよ、とお伝えしました。

保育士の配置基準は改定しませんか?

ー親が働いていなくても保育園などに預けることができる「こども誰でも通園制度」に関連して、保育の質を担保、向上させるために保育士の配置基準そのものの改定を求める声もあります。基準の改定はしないのでしょうか。

 配置改善は保育士の確保に必要となる取り組み。こども誰でも通園制度のスタートでも、職員の確保が必要になってきます。配置改善をした上で、保育士の復職支援をしたり、資格取得の支援、働き方改革、本当の意味でのICT化などをしっかりやることが先決だと思います。

 わが国ではまだまだ大人が子どもを子ども扱いしていて、きちんと子どもの意見を聴いてこなかった。だからこそ、きちんと子どもの意見を尊重できるような社会にすることができれば、世界に比べても著しく低いと言われている自己肯定感や自己有用感も改善すると思いますし、わが国の未来もより明るいものになっていくと思います。

取材を終えて

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 小倉大臣は、自らの言葉で、子どもが子どもらしく暮らせる社会づくりへの思いを語ってくれました。新幹線で騒ぐ子どもを注意する保護者に、「気にしないで」と声を掛けたというエピソードは、好感が持てました。周りの目を気にして子育てする保護者は多い中、地道ではありますが、こうした小さなアクションを積み重ねることで、いつかは「子どもは泣いて騒いで当たり前」と受け止める社会へと変わっていくのだなと思います。

 一方で、こども家庭庁が4月に発足して以来、「子育て支援やったフリ」などと、SNS上では厳しい意見が飛び交っているのも現実です。すくすく編集部にも数多くの切実な声が届いています。この9月に開設5周年を迎える「東京すくすく」編集チームは、子育てを取り巻く施策の課題一つ一つを取り上げ、率直な声を直接伝えるべく、これからも取材を続けていきます。

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