〈奥山佳恵さんの子育て日記〉4・障がいを忘れ、初めて怒ってしまった日

(2019年8月16日付 東京新聞朝刊)

樹上テントにもお泊まりしました! 大好きなパパといつもいっしょ

「パパじゃなきゃ食べない」と言う次男にキーッとなった

 2泊3日の家族旅行に行ってきました。今年訪ねたのは、福井県池田町。美しい緑の山々、思わず長男と横並びで寝転んで眺めた満天の星。お天気にも人にも恵まれ、大満足の3日間…でしたが、旅行から帰った翌日から、思わぬ展開が待っていました。

 旅行前と同じ、いつもの生活を始めようとした途端、つまずいたのです。学童へと向かうため用意した朝ごはんを次男の美良生(みらい)が一口も食べない。頑として食べない。時間が迫り焦る私。思わず大きな声を出してしまいました。「どうして食べないの!」


〈前回はこちら〉3・ダウン症の次男のおかげで長男が見つけた「道」


 美良生に腹を立てたのは、この時が初めてです。それくらい、普段はこちらの言うことを聞いてくれる「いい子」なのに、この日の彼は「パパといっしょじゃなきゃ食べない」。その理不尽さにキィーッとなり、私の血圧がますます上昇! 根っからのパパっ子で、普段は朝しか会えないパパと3日間ベッタリ過ごすことができ、パパっ子に拍車がかかっていたのです。

意気消沈する私に夫は「それが障がいがあるってこと」

 ああ腹が立つ! 「パパじゃなきゃ食べない、なんてワガママを言っていて、パパがいない時はどうするの!」。本当は部屋でまだ眠っていましたが「パパなんてもういない!」と言い放ったところ、私の声に起こされ、主人が美良生にごはんを食べさせてくれました。してやったり顔の美良生。一方の私は意気消沈。一気にこれから子育てをしていく気力を失いました。

 しばらくして主人に、しょんぼりする気持ちを打ち明けると「それが障がいがある、っていうことじゃない?」。

介護と同じ「周りが変わるべき」 でこぼこ母子の学び

 そう言われてハッとしました。そうだった。あまりにも滞りのない日々に、美良生にダウン症という特性があることを忘れていました(笑)。「美良生を変えようとするのではなく、周りが変わらないと」と主人。「そういうところもある子」と受け入れていかないと。昨日までできていたことが急にできなくなる、これは多分、介護にも似ているよね-と。

 そうか。美良生だってコントロールできなかったんだ。「できなくなる」ことはみんなにも訪れることで、多くの人がいずれ介護される立場になる。そう思うと美良生だけが特別ではないと思えた。できない相手に気持ちが高ぶった時は、私だって完璧じゃない、と思うことにしよう。

 まだまだ私は母としても発展途上中。でこぼこ同士、いっしょに、育ちあっていこうね!(女優・タレント)

  
〈次回はこちら〉5・同じ質問を繰り返した祖父に長男の反応は…

コメント

  • 奥山さんのご立腹。よぉくわかります。 いつもいつも365日24時間母親でいることの大変さ。子供を大事に想って過ごしているからこその気持ちの表れです。ご家族がみんな素敵です。羨ましいです。子育てがとて
     
  • ほんと。その通りですね。 わたしは学童で支援員をしております。学校では。特別クラスいる。学童では。普通のお子さんと一緒。ついつい。普通と同じか思ってしまう。できなくて、あたりまえなんですよ。もとめて