LGBTQ当事者の2人がつくった絵本「あおいらくだ」 違いを認め合う社会を願って

(2020年11月18日付 東京新聞朝刊)

絵本「あおいらくだ」を出版した長村さと子さん(左)と茂田まみこさん=東京都新宿区で

 「違うって、すてきだね」-。東京都内在住の性的少数者の女性2人が、そんなメッセージを込めた絵本「あおいらくだ」を作った。旅に出た青いラクダが茶色いラクダに出会い、互いの違いや魅力に気づいていく物語。性的少数者支援に携わる作者の2人は、多様な価値観を認める社会になるよう願う。

動物の色や見た目 決めつけに違和感

 絵本を出版したのは、子どもを持ちたい、育てたいLGBTQ当事者を支援する「一般社団法人こどまっぷ」(新宿区)共同代表の長村さと子さん(37)と、メンバーの茂田(もだ)まみこさん(40)。2人は互いをパートナーとして数年前に結婚式も挙げている。

 きっかけは2年前、人形劇を作るワークショップに参加した茂田さんが、登場する動物の色や見た目で、せりふが決められていることに抵抗感を抱いたこと。その場で余っていた青い画用紙で自身が好きなラクダを描き、その後、一気に物語を書き上げた。

絵本「あおいらくだ」から=絵・楓真知子、北樹出版提供

亡くなった仲間 その息子に届けたい

 物語の出会いの場面で茶色いラクダは「きみは わたしが であってきた らくだとは ぜんぜんちがうね あおくって なんだか へんてこだ」と青いラクダに言う。空や夜、海を一緒に旅して美しさを共有し、互いの良さを知っていく。「最初は何者か分からないけど、一緒に遊んだら楽しいね、という気持ちを意識した」と茂田さんが話す。

 長村さんは、この物語を読んだ時、団体を共につくった亡き仲間の3歳の息子に届けたいと思った。レズビアンだった仲間は、ゲイの友人から精子提供を受けて出産後、まもなく亡くなった。「その子が『普通とは違う』と言われても、世界には自分のことをすてきだと思う人が必ずいる。大きな愛で包まれている、と彼自身が思える絵本を贈りたいと思った」と言う。

とらえ方次第で「違い」は豊かになる

 今春、新型コロナウイルスの感染拡大で外出できない親子にと、長村さんが友人の劇団関係者に声をかけ、音声だけのオーディオブックにした。俳優の小島聖さんらも参加。その後、絵本化の話が進んだ。

 「居心地が悪い『違い』も、とらえ方次第で豊かになる」と茂田さん。長村さんは「絵本が多様性や違いについて話し合うきっかけになれば」と話した。

 本にはオーディオブックと音のない動画のQRコードも付く。36ページ。税込み1980円。問い合わせは北樹出版=電話03(3715)1525=へ。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年11月16日