お互い思っているのになぜ?「6年間育てた里子に会いたい」夫婦の請求棄却 それでも面会交流に光 東京地裁「柔軟に検討を」
女性の入院で、児相が女児を一時保護
判決などによると、夫婦は10年、当時3歳の女児を里子に迎え、養育を続けた。2016年12月、女性がストレスなどから帰宅途中に橋の上から川に飛び込み、医療保護入院となったことを受け、杉並児相は女児の一時保護を決定。翌年1月に里親委託を解除した。
夫婦側は、女性の主治医が「養育可能」と診断していたと主張したが、判決は、女性が退院後も1年間の通院と服薬が必要だった点などから、児相が里親委託を解除したことに「裁量権の逸脱や乱用があったとはいえない」と指摘。面会交流の制限の違法性も認めなかったが、原告と女児の間の「愛情深い養育」や「愛着関係の強さ」にかんがみ、交流については女児の意向を踏まえ「関係機関で柔軟に検討されることが期待される」とした。
面会もプレゼントもできないまま6年
夫婦は女児が一時保護されてから6年間、面会が一切認められず、誕生日プレゼントを渡すことも児相に拒まれている。女性は「会いたい者同士、なぜ会えないのか。違法かどうかではなく、子どもが幸せになるかの判断をすることが児相の役目」として、交流に関する判決の指摘を都が尊重するよう求めた。
訴訟では、女児が一時保護された後も、夫婦に会いたいと職員に伝えていたことも明らかになった。女児にかけたい言葉を問われ、夫は「会えたら、『お母さんが退院したらすぐに迎えに行く』との約束を守れなかったことを謝りたい。あとは元気な姿さえ見られたら」と声を詰まらせた。女性は「あなたが困ったときに帰ってこられる場所があるよ、安全基地がここにあるよと伝えたい。(社会的養護の対象となる)18歳までじゃなくて、それから先の人生のほうがずっと長いので、後ろ盾にならせてほしい」と語った。
顔を出した思い「伝わってくれたら」
顔を出して会見に臨んだ理由について、夫は「自分たちがやっていることが、娘に伝わってくれたら」と話した。女性は自身の行動がきっかけで女児と離れることになったことなどに苦しんできたとして、「『あのときこうすれば良かった』という思いをほじくり返されることはつらい」と心情を明かした。ただ、児相から一方的に里親委託を解除されて苦しむ里親がほかにもいるとして「子どもたちのほうがもっと苦しいはず。体験した者の責任として、堂々と発信していきたい」と力を込めた。
夫婦は控訴する方針。都の担当者は「都の主張が認められた。面会交流の部分について、判決を受け止めたい」と話した。