俳優 宮澤エマさん 祖父は元首相。芸能界は「政治家で成功するより難しい」と母に言われたけれど…
姉は演劇経験があり、ほめ上手
5つ上の姉は社交的でオールAの優等生タイプ。私は勉強もピアノもかなわない。でも、小学校5、6年で姉が演劇部に入って芝居をしている姿を見て「あれなら私の方がうまくできる」と、根拠のない自信を持ちました。後に私も演劇部へ。言葉を通して表現することに興味を持ったのは姉のおかげです。
姉は今、起業してニューヨークにいますが、私の舞台があるたびに帰国して見に来てくれます。演劇経験がある人なのでほめ方もひと工夫あったりして。地に足を付けて物事をちゃんと俯瞰(ふかん)して見なくてはいけないと、常に思い出させてくれる存在です。
母は正義感が強い人。言いたいことを貫き通す姿はたまにめんどくさいなとも思うんですけど、とてもリスペクトに値すると思います。父は米国の外交官で、日本で母と出会いました。雰囲気が柔らかで、言葉巧みに家族の調和を取っている人です。父は音楽を愛し、祖母は市民劇団をやっていたそうで、そんな芸術的な部分を私は父方からもらったのかな。
家族は皆、夢を応援してくれた
母方の祖父は元首相の宮沢喜一です。私が18歳の時に亡くなったのですが、母を通して「経済的自立なくして真の自由は得られない」と、祖父の言葉を聞いています。一時期3世代で暮らしたことがありますが、とても優しくて公私を分ける人。家の中に仕事、政治を持ち込まない。子どものころは将棋やトランプの神経衰弱などで遊んでもらいました。
日曜の夜、祖父はソファでNHKのニュースを見終わってからご飯に参加し、皆で一緒に大河ドラマを見るのがルーティンでした。もう少し長生きしてくれたら、今の政治状況の話とか、私のお芝居の感想とかも聞きたかったですね。新しい世代の価値観が3世代前はあり得ないということもある。家族間で夫婦別姓とか同性婚とかディベートできたらおもしろいし、それを社会に反映できる気がするんです。
家族は皆、最初から私の夢を応援してくれました。母には「政治家として成功するより、もっと難しいと思う」と言われましたが、「それでもやりたいならやれば」と。芸能の世界に入り、独り立ちが厳しい時に支えてもらって本当に感謝しています。
今回主演する「ラビット・ホール」は家族の物語。姉に同じくらいの年の子どもがいるのでリアリティーを感じます。母は自分のキャリアを捨てて父と一緒になることを選び、その選択の上に家族があって私たちも生まれた。台本を読むと、姉夫婦や両親の思いなどを考えさせられます。
宮澤エマ(みやざわ・えま)
1988年、東京都出身。2012年に芸能界に入り、ミュージカル「天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~」などの舞台や、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」などのテレビドラマで活躍。4月9~25日に東京・PARCO劇場で上演される舞台「ラビット・ホール」では初主演を務める。