過酷な「付き添い入院」改善すべきでは〈森戸やすみのメディカル・トーク〉
寝具も食事も支給されず
保育士による園児虐待が相次いで判明し、保育士の配置基準のおかしさも指摘されています。今や共働き世帯は専業主婦世帯の2倍の数に上ります。保育環境が安全でないと大変困ります。
小児の入院では、保護者の付き添いを求めることがあります。一人では食べたりミルクを飲んだりできず、医療機器などを触ってしまうような幼い子であっても、看護師の配置基準は大人と同じ1対7。多くの病院では、それ以上の人員を配置するなどの十分な対応ができていないためです。付き添う大人は寝具も食事も支給されず、24時間離れられないため過酷な状況です。
「異次元」と言うけれど
保育士の職場環境を改善しようという潮流はあるものの、付き添い入院に対しては動きがありません。この2つの問題は、どちらも子どもを育てる人を不安にさせます。既にいる子を大事にし、もう一人子どもがほしいと希望する人を躊躇(ちゅうちょ)させないような仕組みづくりは、有効な少子化対策です。
昨年1年間に生まれた子どもの数は統計史上最少、子どもの自殺は過去最多でした。一方で、「子どもの数が増えれば予算も増える」といった「異次元」の意見が内閣から上がっています。必要なのは、予算の数字合わせをするような策ではなく、安心して子どもを産み、育てられる国だと思えることではないでしょうか。
森戸やすみ(もりと・やすみ)
小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)勤務などを経験。「子育てはだいたいで大丈夫」(内外出版社)、共著に「やさしい予防接種BOOK」(同)など、医療と育児をつなぐ著書多数。「祖父母手帳」(日本文芸社)も監修。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝えます。
※次回は5月23日(火)に掲載予定です。
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