〈パリ特派員の子育て通信〉新しい先生が来て様変わり! 文字も算数もしっかり

竹田佳彦 (2019年5月14日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
2017年9月からフランスに駐在する東京新聞パリ支局の竹田佳彦記者(40)が、現地の子育てについてつづります。随時掲載。

 先日、学年の途中ながら担任がマイリス先生からアマンディーヌ先生になりました。「フランスでは、先生によって授業内容が全然違う」と知人に聞いていましたが、変化は予想以上でした。

 娘を幼稚園に連れて行ったある朝、教室入り口に張られた紙に気が付きました。「朝のお茶会にぜひご参加ください。担任が代わる前、最後の機会です」。突然の案内に驚いてマイリス先生に尋ねると、研修なのか数カ月間学校を離れ、学年末にはまた戻ってくるとのこと。他のお父さんやお母さんも「途中で代わるなんて珍しいわね」と話していました。娘は活発で明るいマイリス先生が大好きだったので、寂しそうです。

 後任でやってきたのは、アマンディーヌ先生。落ち着いていて、ちょっと厳しそうな雰囲気です。1週間ほど、マイリス先生と2人で受け持つ引き継ぎ期間があり、その後、新しい生活が始まりました。

 変化は、さっそく起きました。

 朝、教室に行くと真ん中の平テーブルにアルファベットで書かれた園児たちの名前のプレートが並べてありました。頭文字だけ赤色で書かれ、裏には顔写真が貼り付けてあります。登園した子どもは自分の名前が書かれたプレートをテーブルから見つけ出し、壁の名前かけに入れていきます。レオニーやラザールのように、同じ「L」で始まる名前もあるため、ちゃんと読めなければ取ることができません。これまでは顔写真と名前が一緒に表に書かれた出席プレートを取るだけでしたから、文字を覚えるいい機会になりそうです。娘も間違えずに自分の名前を見つけ出し「トレ・ビヤン(すばらしい)」と先生に誉められて誇らしげでした。

 水曜日の朝には勉強会も始まりました。午前8時45分から9時15分までの30分間、算数のお勉強です。娘が持ち帰ったプリントを見ると、まずは数の概念を覚える練習。左に描かれた人形の数だけ右側にシールをはっていきます。人形3人の横にはシールを3枚貼る、という具合。娘は5問中3問目まで順調にやっていましたが、4問目は4枚、5問目は5枚とルールを無視して貼りだしました。「だって、たくさんが良かったんだもん」。

 仕方がなかったのとばかりに、困った顔で話す娘に、つい吹き出してしまいました。ただ、アマンディーヌ先生は「学年末に初等クラスから中等へ進級するためには、ちゃんと理解していないといけませんよ」と言います。算数だけでなく、ルールを守る勉強にもなりそうです。

 勉強会には、保護者も協力を求められました。毎週水曜、子どもを幼稚園に送ってきた保護者3、4人が園に残り、班分けされた子供たちの勉強にボランティアで付き合います。子供たちにルールを説明したり、手伝ったりするようです。夕方、迎えに行く妻によると、マルゴーちゃんのお母さんが班のメンバーを教えてくれ「みんなかわいかったわよ。問題はちょっと間違っちゃったけど」と様子を教えてくれました。手伝うことで、親は子どもたちの学習状況を知る機会になるのでしょう。

 娘の仲良し、ルイ君のお母さんと話していると、やはり先生の交代には驚いたようです。「ルイもマイリス先生が大好きだったから残念だけど、新しい先生はしっかり勉強を教えてくれるからいいわね」との感想でした。入園当初は親しみやすい元気な先生、慣れた頃にしっかりと勉強させてくれる新たな先生。結果的に、娘にとってありがたい交代になりました。

 なお、先生が替わったクラスですが、マイリス先生が戻ってくるため、前回紹介したピンボリくんの家庭訪問は続くことになりました。今週末も、どこかの家庭で過ごしています。

 前回の記事はこちら〈パリ特派員の子育て通信〉「ピンボリ」がわが家にやってきた!