保育所が急増、広がる「格差」…親や保育士が抱えるさまざまな不安

園庭で走り回る子どもたち。子どもの安全と発達を守るため、保育の質を担保することが大きな課題だ

 行政による認可保育所の検査はこれまで以上に重要性を増しています。認可保育所は本来、国の設置基準を満たした安心できる施設のはずですが、ずさんな運営を行う事業者の参入などで、不適切な保育が行われていることもあるからです。

ある保育士の証言「経営者が保育をわかっていない」

 「これで子どもたちを預かれるのだろうか」。40代の保育士女性は、昨年2月、人材派遣会社の子会社が約1カ月後に開園する首都圏の認可保育所で働き始め、不安に襲われた。

 保育室におもちゃはなく、年間行事の計画もない。園庭がないのに、散歩に行くのに必要なカートを置く場所や、プール遊びをするスペースも考えられていなかった。

 保育士は半数が新人や経験1、2年の若手。女性は子育てと両立するため、当初はパート勤務を希望していたが、「人が足りない」と打診され正社員になった。就職直後には園長候補の保育士が辞めてしまい、急きょ園長に就くことに。戸惑ったが、「子どもたちが入園してくる。やるしかないと思った」。

 だが、開園後は連日午前7時前から午後8時すぎまでの長時間勤務で、体調を崩して半年で退職した。「ベテラン保育士を増やすことや、必要な備品の購入を提案しても現場の声は通らなかった。経営者が保育をわかっていなかった」

都心のビル内保育所 散歩は週1回「閉じ込めている感じ」

 東京都心の区に住む女性(35)は昨年、認可保育所に通う4歳の長女の外遊びが極端に少ないことに疑問を持った。園庭もホールもないビル内の保育所だが、散歩は週1回ほど。住宅地で騒音への配慮から窓も開けられず、「建物に子どもを閉じ込めている感じがした」という。

 担任に散歩を増やしてくれるよう話しても、「まだ外でうまく手がつなげない」などと取り合ってもらえなかった。区に相談し、確認してもらうと、他のクラスは毎日のように散歩に行っていると分かり、長女のクラスも改善された。

 保育士の入れ替わりが激しいことも気掛かりだ。昨年度長女の担任だった4人は、すでに異動や退職でいない。女性は「保育所は子どもが健康に伸び伸び過ごせる場であってほしい。行政には子どもの視点でチェックしてもらいたい」と求める。

“初心者”も参入…「一緒に保育の質を高めていくことが重要」

 ある区の担当者は「経験に乏しく、問題点を自分たちでは改善できない事業者や園もある。行政がより丁寧に継続して関わっていく必要がある」と感じている。

 都内で複数の認可保育所を運営する50代の男性は「待機児童対策を急ぐあまり、最低限の基準すら守れていない保育園が増えているのは事実で、行政が指導監督することは重要だ。ただ、現場を取り締まるという発想では保育は良くならない。新しい園に対しては定期的に相談に乗るなど、共に質を高めていく姿勢が必要だ」と話している。
  

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◇みなさんからのコメントを受けて、小規模保育施設についての記事を公開しました。〈増えてる「小規模保育」って? 現状と特徴を把握しておこう〉(2018年9月27日)

コメント

  • 大規模園に勤めている保育士です。 保育の質について現場として感じているのは「研修の質と量」「職員体制」「園内設備」の3つ両立している必要があることです。 一番不安に感じているのは「職員体制」で、保
     
  • 何を持って質が良いと思うかも親によってよりけりな気がする。自分は自由なところが気に入っていれたのに、他の親が勉強増やせとか言ってるとそれは質なのか?と疑問に感じる。