子どもの園バス置き去りを防ぐために クラクション鳴らす訓練、呼吸センサー開発 専門家「誰にでも起こる前提で考えるのが大事」
「自分でSOS」クラクションに座って
埼玉県狭山市の武蔵野短期大学付属幼稚園では12日、送迎バスに置き去りにされた園児がクラクションを鳴らして助けを求める訓練に初めて取り組んだ。年少の園児42人が、ハンドルの中心にあるクラクションを手で押したり、力が足りない時のために上に座ったりして音を出した。
小島直子園長(42)は「自分でSOSを出せるようにするのが狙い。参加園児がみんなできたので、やってよかった」と話した。
ドライバーの「置き去り経験」を調査
企業でも原因の分析や対策の研究が進んでいる。自動車部品の専門商社「三洋貿易」(東京)は今年、子どもの車内置き去りの実態をインターネットを通じて調査。子どもを車に乗せて運転する全国の一般ドライバー2652人のうち14人、送迎バスの運転手や管理者267人のうち3人が、過去1年間に子どもを車内に置き去りにした経験があった。
日本自動車連盟(JAF)によると、昨年8月に子どもを残したキー閉じ込めによる出動は63件。さいたま市では2019年、2021年に1件ずつ、市の認可保育施設で送迎バスでの園児の置き去りや降ろし忘れが報告されている。
欧米では「防止装備の設置」義務化へ
三洋貿易は、ルクセンブルクのIEE社から車内の人を検知するセンサーを輸入し、2023年の国内販売を目指す。センサーは毛布の下で寝ている幼児の呼吸も感知できるという。センサーは米国のスクールバスなどで採用されており、三洋貿易の堀内登志徳さんは「人のミスはなくせない。最後のとりでとしてセンサーが役立てば」と話す。
国内でも、アイシン(愛知県刈谷市)が置き去り検知のセンサーの開発に取り組む。アイシンによると、米国では毎年約40人が置き去りで死亡しているとの統計がある。北米や欧州で2025年ごろに新車に置き去り防止装備の設置を義務付ける動きがあり、同年の実用化を目指す。文部科学省などは、送迎バスへのセンサー設置を推進する方向で検討している。
安全対策は複数組み合わせるのがいい
事故予防が専門で佐久総合病院佐久医療センター小児科医長の坂本昌彦医師は「人はミスをする、置き去りは誰にでも起こり得るという前提で考えるのが大事だ」と指摘する。
米国では、クラクションの鳴らし方だけでなく、チャイルドシートの外し方、運転席のドアロックの解除方法などを子どもに教えることが推奨されているという。「安全対策は複数組み合わせる方がいい。センサーを自動車の標準装備にすべきだ」と強調した。