問題相次ぐ企業主導型保育所 「質の確保、十分でなかった」と少子化担当相
大野暢子 (2018年12月18日付 東京新聞朝刊)
政府が待機児童対策の切り札として導入した「企業主導型保育所」を巡り、各地で休園や定員割れなどの問題が相次いでいることを受け、政府は17日、制度の課題を検証する有識者会議の初会合を内閣府で開いた。本年度中をめどに結論を取りまとめ、制度の改革に生かす。
課題検証の有識者会議で「量に重点が置かれ過ぎ」
宮腰光寛少子化対策担当相は会合でのあいさつで「量の整備に重点が置かれ過ぎ、質の確保への意識が十分でなかったのではないか。一度立ち止まり、改善を図るべきだ」と強調した。
有識者会議は、保育制度に詳しい前田正子甲南大教授が座長を務め、保育事業の専門家や公認会計士ら五人で構成。この日は現場を知る団体へのヒアリングを実施し、保育事業者でつくる一般社団法人「日本こども育成協議会」の担当者は「企業型は保育に初めて取り組む事業者が多く、ノウハウ不足で運営がうまくいっていない」と指摘した。
設置基準は緩いのに補助は認可並み…不正受給も
企業型は、保育事業への企業の参入障壁を下げ、託児の受け皿を増やそうと、2016年度に始まった制度。今年3月末の施設数は2597に上る。
認可施設に比べ、保育士の配置基準が緩く、保育行政を担う市区町村に審査・指導権限がない。認可外施設の一形態だが、厚生年金に加入する企業から集めた拠出金を財源に、認可並みの補助が受けられる。
従業員の子を預かったり、一施設を複数企業で利用したりする方式があり、地域の乳幼児も入所できる柔軟性が強みだが、助成金の不正受給や経営悪化などのトラブルも発覚している。