お笑い芸人 にしおかすみこさん 「ポンコツ」だけど家族。一緒に笑う時間が増えてうれしい

海老名徳馬 (2023年2月12日付 東京新聞朝刊)

家族について話すお笑いタレントのにしおかすみこさん(中西祥子撮影)

しっかり者の母が…認知症になっていた

 3年前、コロナ禍で仕事がゼロになって、貯金もなくて引っ越しを決めたんです。実家はどうしているかと気になって1年くらいぶりに様子を見に行ったら、床が砂だらけで生ごみ臭くてびっくりしました。

 実家は両親と姉の3人。母(82)は長く看護師をしていてしっかり者で、働きながらダウン症の姉と私を育ててくれた。父はサラリーマンでしたが、そのお金を飲み代に使ってしまう。母が一家の大黒柱というイメージでした。

 その母が、散らかった家で「頭かち割って死んでやる」とか言うんです。これはおかしいと実家で暮らすことにして、母を病院に連れて行ったら認知症と診断されました。

 記憶を忘れる頻度はどんどん高くなっていますね。母は時々、私が無職で一日中公園に座っていると思っています。今朝も「こんな寒い日に見え張って働いているふりをしなくていいんだよ」と言う。おはようを言ったのもすぐ忘れる。ネガティブな話を繰り返す時はちょっとしんどい。

 ただ最近は母に少し心境の変化も。掃除はしないけど、ごみを出す。自分がやらなきゃと意識が変わったのかな。先日はごみ袋を2つ持って冷蔵庫と壁の間を通り抜けられなくなり「すいません、出しに行けません」とけたけた笑って。一緒に笑う時間が増えていくのはうれしいですね。

自分が元気じゃないと、家族を救えない

 姉は私より1つ上で、母が世話をしています。母は現在と過去の認識があいまいな時があるんですが、ぎりぎり現在にとどまっているのは姉がいるからじゃないかな。母の生命線。だから私は姉の面倒は見ないよと言っています。

 父は定年した今も酔っぱらいです。母とはもめないでと言っても毎日もめて、お酒を飲みに行く。変わらないけれど、父も年を取ったと感じます。3人のうち誰から倒れてどんな病気になって…と考えると、気がめいります。

 だから私はいつの頃からか、今日と明日の朝ご飯までしか考えないようにしています。そこまでなら、私は病まずになんとかできるという感じ。自分が元気じゃないと家族も救えない。自分ファーストでいこうと思っています。

 そんなポンコツな家族のことをネット上で書いています。始めた理由はいくつかありますが、母と生活していて「頭と体と心が全部健康な時期は短いんじゃないか、だったら前からしたかった書く仕事をしよう」と思ったこと。あとはしんどい方や疲れた方が、私の文章で笑ったり、ほっとしたりしてほしいなあと。

 家族を売るという気持ちや、誰かを傷つけるのではとの思いもあって散々迷いましたが、書いてみたら皆さんの反応がすごく優しかった。すごくびっくりしたし、ありがたいなと思います。

にしおかすみこ

 1974年、千葉県出身。19歳で芸人になり、2007年に女王様のキャラクターで人気を集め、多くのテレビ番組に出演。リポーターなどとしても活躍。家族との生活をつづるエッセーを2021年からインターネットの「FRaU web」に連載。書き下ろしを加えた著書「ポンコツ一家」(講談社)を今年1月に刊行した。

コメント

  • にしおかすみこさんのお母さんが認知症で、お姉さんはダウン症とかで、大変だと思いますが、家族ですので、無理せずに助けてあげて、地域や施設の利用などもして、みんなで笑顔で幸せに過ごしてほしいです(^o^)
    なべまま 女性 60代 
  • 初めて、読んで,辛いときとか、悲しい時とか、あると( ̄▽ ̄;)思うのに、なぜか、クスッと笑え,こころガラクに、なるような、いいお話でした。これからも、続けて、読みたいと思います。
    岡ちゃん 男性 60代