お笑い芸人 にしおかすみこさん 「ポンコツ」だけど家族。一緒に笑う時間が増えてうれしい
しっかり者の母が…認知症になっていた
3年前、コロナ禍で仕事がゼロになって、貯金もなくて引っ越しを決めたんです。実家はどうしているかと気になって1年くらいぶりに様子を見に行ったら、床が砂だらけで生ごみ臭くてびっくりしました。
実家は両親と姉の3人。母(82)は長く看護師をしていてしっかり者で、働きながらダウン症の姉と私を育ててくれた。父はサラリーマンでしたが、そのお金を飲み代に使ってしまう。母が一家の大黒柱というイメージでした。
その母が、散らかった家で「頭かち割って死んでやる」とか言うんです。これはおかしいと実家で暮らすことにして、母を病院に連れて行ったら認知症と診断されました。
記憶を忘れる頻度はどんどん高くなっていますね。母は時々、私が無職で一日中公園に座っていると思っています。今朝も「こんな寒い日に見え張って働いているふりをしなくていいんだよ」と言う。おはようを言ったのもすぐ忘れる。ネガティブな話を繰り返す時はちょっとしんどい。
ただ最近は母に少し心境の変化も。掃除はしないけど、ごみを出す。自分がやらなきゃと意識が変わったのかな。先日はごみ袋を2つ持って冷蔵庫と壁の間を通り抜けられなくなり「すいません、出しに行けません」とけたけた笑って。一緒に笑う時間が増えていくのはうれしいですね。
自分が元気じゃないと、家族を救えない
姉は私より1つ上で、母が世話をしています。母は現在と過去の認識があいまいな時があるんですが、ぎりぎり現在にとどまっているのは姉がいるからじゃないかな。母の生命線。だから私は姉の面倒は見ないよと言っています。
父は定年した今も酔っぱらいです。母とはもめないでと言っても毎日もめて、お酒を飲みに行く。変わらないけれど、父も年を取ったと感じます。3人のうち誰から倒れてどんな病気になって…と考えると、気がめいります。
だから私はいつの頃からか、今日と明日の朝ご飯までしか考えないようにしています。そこまでなら、私は病まずになんとかできるという感じ。自分が元気じゃないと家族も救えない。自分ファーストでいこうと思っています。
そんなポンコツな家族のことをネット上で書いています。始めた理由はいくつかありますが、母と生活していて「頭と体と心が全部健康な時期は短いんじゃないか、だったら前からしたかった書く仕事をしよう」と思ったこと。あとはしんどい方や疲れた方が、私の文章で笑ったり、ほっとしたりしてほしいなあと。
家族を売るという気持ちや、誰かを傷つけるのではとの思いもあって散々迷いましたが、書いてみたら皆さんの反応がすごく優しかった。すごくびっくりしたし、ありがたいなと思います。
にしおかすみこ
1974年、千葉県出身。19歳で芸人になり、2007年に女王様のキャラクターで人気を集め、多くのテレビ番組に出演。リポーターなどとしても活躍。家族との生活をつづるエッセーを2021年からインターネットの「FRaU web」に連載。書き下ろしを加えた著書「ポンコツ一家」(講談社)を今年1月に刊行した。
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