「治ったら思い切り走りたい」願いをアートに 患者対象のコンテスト つくば市の9歳女児が3年連続入賞
将来は「漫画家かイラストレーターに」
紗和さんの病気は、指定難病の若年性特発性関節炎(小児リウマチ)。母親のゆう子さん(38)によると、1歳の時、右手親指や両膝が腫れ、全身に6カ所以上の炎症が確認された。3歳の時には非感染性ぶどう膜炎も併発した。
歩き始めの時期と発症が重なった紗和さんには、思い切り走った経験がない。体育の授業はほとんど見学。運動会では痛みで思うように走れず、悔しくて泣いていた。
そんな紗和さんが打ち込むのがアートだ。家で人形の家を工作したり、学校ではクラスメートに請われるまま、人気アニメ「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」のキャラクターを折り紙で作って配ったりしている。「漫画家かイラストレーターに憧れる」と目を輝かせる。
タイトルに「走る」や「きぼう」の言葉
紗和さんが3回連続で入賞したのは、製薬会社アッヴィ(東京都港区)が主催する「自己免疫疾患アートプロジェクト」。患者が創作したアートを通じて自己免疫疾患への理解を深めようと、2015年から実施している。
紗和さんは、1回目に応募した絵画「きぼうの手」が佳作に選ばれたのを皮切りに、19年の2回目は貼り絵「歩く・走る・跳ぶ」で優秀賞に、3回目の今回はモザイクアート「走りたい」で審査員賞に輝いた。
今回は2020年6月~2021年1月に募集し、絵画や陶芸など31点が寄せられた。5月に美術家や医師、患者会会長らが審査し、9点の受賞作品を選んだ。
ヒマワリのように力強く、明るく、負けず
「走りたい」は、卵の殻をアクリル絵の具やマニキュアで染めて砕き、キャンバスに貼り付けた。大きなヒマワリの間を楽しげに走る女の子の様子をカラフルに仕上げた。
審査に当たった日本AS(強直性脊椎炎)友の会の山下昭治副会長は「思い切り走ったこともない暮らしの中からこの力強い作品。ヒマワリのように力強く、明るく、病気に負けず成長されていることがよく分かる」と講評した。
「作品にいっぱいコメントがもらえてうれしい」と紗和さん。ゆう子さんは「絵は、娘にとって自分の存在を目指す大切な手段。これからも完治を目指して家族で頑張りたい」と話している。