参院選で考えたい児童相談所の窮状 千葉市の一時保護所は年330日が満員状態 専門性のあるスタッフを増やすには?
虐待相談が増え、支援が届きにくく
2020年度の千葉県と千葉市の児童虐待相談対応件数は1万1629件。近年は右肩上がりで増加する。
虐待の種別では、言葉による威圧やドメスティックバイオレンス(DV)を子どもが目撃するなどの「心理的虐待」が全体の半数を占める。殴る蹴るなどの暴力を加える「身体的虐待」は3割前後。家庭事情が多様化する中、市の中堅児相職員は「対応が難しいケースが増えており、スタッフの専門性の確保が必要」と強調する。
野田市の小学4年栗原心愛さん=当時(10)=が虐待死した事件では、所管エリアの人口が多い児相を中心に職員1人当たりの対応件数が膨大になり、支援の目が行き届きにくい問題も明らかになっている。
職員の大きな個人差 研修にも課題
児童虐待問題に詳しい千葉大大学院の後藤弘子教授(刑事法)は「(児相には)経験年数が少ないために、ケースの見立てが適切ではないと感じる職員もいて、個人差が大きい。そのため、組織として総合的な判断力が問われている。今後児相が増設されても、法定の研修カリキュラムがないなど課題も多い。市町村の虐待対応との連携強化も同時に必要だ」と指摘する。
厚生労働省は人口50万人に最低1カ所は児相が必要とする方針を示している。現在、千葉県内には県や千葉市が運営する児相が計8つある。県は2022年度中に児相職員を約260人増員し、2027年度までに新たに2カ所設置する計画。船橋、柏の中核市2市も今後、独自に新設する予定だ。
今国会では、子どもを親から強制的に引き離す「一時保護」の手続きで、裁判官が司法審査で可否を判断する改正児童福祉法が成立した。不必要な一時保護の防止が期待されるが、後藤教授は「児相側は司法審査を心配して、必要な運用ができなくなるおそれもある。一時保護をする時ではなく、解除する時こそ司法審査が必要だ」と強調する。
国は新資格を創設し対策を進めるが…
千葉市の児相は今年4月から、管轄地域を東部(中央区、若葉区、緑区)と西部(稲毛区、花見川区、美浜区)に分ける2所運用を始めた。市担当者は「2所化に伴う職員増員で、一つひとつのケースに充てる時間が増えるのはメリット」と話す。ただ、その分、経験の少ない若手職員は増える。
国は虐待対応や家庭支援に高い専門性を持つ新資格「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー(仮称)」も創設し、2024年度から運用するなどさまざまな対策を進める。県内の児相勤務3年目になる女性職員(27)は「まだまだ不安になることは尽きないが、多くのスタッフで各ケースに関わることで、1人でも多くの子どもに幸せになってもらいたい」。
コメント