長崎原爆の日に平和の鐘を鳴らす 川崎市の称名寺で子どもたちが参加 現実に起きたことだと感じるために
竹谷直子 (2023年8月10日付 東京新聞朝刊)
長崎に原爆が投下された9日、川崎市幸区の称名寺では、投下時刻の午前11時2分に合わせ、地元の小学生や保護者、地域の人らが境内の鐘を鳴らした。平和を願い毎年続けている行事で、参加者たちは鐘の音が鳴り響く中、犠牲になった人たちを悼んだ。
絵本「ひろしまのピカ」朗読の後に
称名寺に隣接する下平間小学校の児童や保護者ら約10人が参加。原爆の恐ろしさを伝える絵本「ひろしまのピカ」(小峰書店)の朗読を聞いた後、一人ずつ鐘を打ち、手を合わせた。
下平間小6年の田口怜弥さん(12)は、朗読を聞いて「実際に起きたことなんだと実感した。こんなことはこれからも起きてほしくない」と話した。弟の3年の結斗さん(8つ)は「原爆が落ちて死んだ、たくさんの人たちがかわいそう。(戦争は)悲しいことだと思った」と語った。
毎年恒例 終戦記念日の正午にも
称名寺は、1945年4月15日の川崎大空襲で焼夷(しょうい)弾が直撃し、鐘楼堂以外は全焼した。1975年に釣り鐘が完成し、そのころから戦争の歴史と平和の大切さを伝えるため、当時の住職や寺の関係者らで鐘を鳴らしてきた。1982年に川崎市が全国に先駆け、「核兵器廃絶平和都市宣言」をしたことを受け、下平間小の6年生に参加を呼びかけ始めたという。毎年、広島と長崎に原爆が投下された8月6日、9日と終戦記念日の15日に鐘を鳴らし、非核や非戦の思いを表している。
前住職から活動を引き継いだ、住職の本多暁さん(45)は「お寺は戦争の歴史、地域の歴史を伝えていく必要がある」と考え、取り組みを続ける。「原爆が落ちたのは78年前で遠いことのように思えるし、ウクライナとロシアの戦争も距離があるように感じるが、この川崎でも空襲があり、たくさんの被害があった。現実に起きたことだという戦争の事実を感じてほしい。戦争の事実を知らないと平和というものがわからない」と話した。
15日は、玉音放送のあった正午に鐘を鳴らす。事前申し込み不要。