多様化する子育て当事者に「サードプレイス」を 都内のNPOが民間の拠点づくり伝授
孤育て支援はお金にならない・・・
「子どもとちょっと離れ、母親がひと息つける場所をつくりたかった。でも、拠点を構えるのは大変…」「ママの休憩室アリビオ」(葛飾区)を開いた主婦辻野麻美さん(48)は、振り返る。1時間800円で子どもを預かり、同じ部屋で母親に温かい食事やマッサージなどを楽しんでもらう。両親を頼れず、片時も離れられない育児がつらかった自分の経験から2022年1月に始めた。
妊娠中まで働きためたお金を元手に店舗を借りたが、家賃とスタッフ2人への給与で毎月の支出は約20万円に上った。利用者は日に5、6人だが、閑古鳥が鳴く日もあるなど不安定。都の助成金も下りず、昨年7月に常設での運営を諦めた。今は別の場所を月に2日借り、事前予約制で受け入れている。「拠点があれば、保護者がつらいと思った日にすぐに受け入れられるのに」と残念がる。
拠点運営13年の苦楽を伝えたい
こうした人たちに、サロンの運営ノウハウを伝えている「ほっこり~の」は2011年にサロンを開設。代表の内海千津子さん(52)は「母親になっても変わらず輝ける場をつくりたい」と、親子の居場所づくりなどに取り組んできた。企業のイベント出展などで収入の柱ができ、今では、北区と埼玉県蕨市に計4カ所の拠点を持ち、スタッフ約50人の給与を支給できるまでになった。
近年、子育て支援をしたい人から「どうしたら継続できるのか」との相談が増えているという。アウェー育児や高齢出産など子育て当事者が多様化し、内海さんは、自宅や公共の子育て支援施設に次ぐ、第三の居場所として民間支援の需要の高まりを感じている。「公的支援の隙間からこぼれ落ちる人にもアプローチできる民間支援が『サードプレイス』として広がってほしい」と、主婦から事業を拡大してきた経験を、昨年6月からオンライン講座で伝える。
多様な支援したい人の思いを形に
講座では、内海さんらが各地で支援に取り組む民間の事例を紹介。人材や資金など拠点運営に欠かせない4要素について解説する。「自分の持っている資源を書き出してみましょう」などと、運営ステップを実際に考えながら学べる。
昨年9月に受講した千葉県市原市の小暮晴美さん(39)は「失敗談まで赤裸々に聞けて、私でもできるかなと思えた」。不登校の子どもたちの支援に取り組んでおり、NPOの設立を模索中という。沖縄などからの受講者もいて、支援の輪が広がっている。内海さんは「受講してくれた人たちがつながり、支援者同士で支え合えるコミュニティーをつくりたい」と話している。
受講料は基礎編3000円、応用編1万2000円。開催日程など詳細は「ほっこり~の」のホームページ内「子育てサードプレイススクール」で見られる。