義父に娘のおむつ替えを見られたくない 伝えるカギは「プライベートゾーン」と「アサーション」〈子育て相談 すくすくねっと〉
娘のおむつを義母が替える時などに義父が居合わせるとモヤモヤするが、直接伝えると「赤ちゃんだしいいじゃない」と言われそう-。昨年12月3日に公開した母親(35)の悩みには、さまざまな意見が寄せられた。人によって受け止め方が異なる背景や対処法は。読者の声や専門家の考えを紹介する。
義母も「赤ちゃんだしいいじゃない」…気持ちを分かってもらうには?
昨年生まれた長女の裸を義父に見られることが気になります。義母が娘のおむつを替える時などに、義父も居合わせる場合があります。モヤモヤしますが、義母に直接伝えると「赤ちゃんだしいいじゃない」と言われそう。気持ちを分かってもらうにはどうしたらいいでしょうか。(名古屋市・35歳)
「プライベートゾーン」を大切にする
赤ちゃんのおむつ替えなどを見られることへの感覚は、世代や個人によって差が大きい。ジェンダーについての教材作成に関わる順天堂大保健看護学部教授の西岡笑子さんは「日本ではプライベートゾーンという考え方が広まり始めたのが最近」と話す。
プライベートゾーンは、「あなただけの場所」という意味で、水着で隠れる部分と口を指す。西岡さんは「体の中で特に大切なところだから、簡単には人に見せず、触らせない」と説明する。
欧米で驚かれる、トトロの入浴シーン
性暴力を防ぐために、文部科学省が2021年春に教材や手引を公開した「生命(いのち)の安全教育」の中でも触れている。「認知度が上がれば、同様の悩みを持つ方は増えるかもしれない」と西岡さん。今回の場合は「まずパートナーと話し合って、義父母に『この子には自分や周りの人のプライベートゾーンを大切にできる子に育ってほしいと思っている』と伝えてみては」と助言する。
個人によって裸への感覚が異なる例は多い。乳幼児の保護者向けの性教育に携わる子育て団体「はぐ♡ラボ」の中井聖さん(51)は、アニメ映画「となりのトトロ」で父親と娘たちが入浴するシーンを挙げる。欧米では驚かれることがあるといい「正しいか間違っているかではなく、互いが心地よくいるためにフラットな対話ができる関係づくりが大切では」と提案した。
配慮しつつ主張する「アサーション」
今回のように、気持ちを伝える難しさを感じる場合にはどうすればいいか。公認心理師の大美賀直子さん(51)は「相手の気持ちに配慮しながら自分の思いもきちんと伝える、アサーションという自己主張法が有効」と説く。1970年代から米国で発展した方法で「相手が悪いと決め付けない」「自分だけが我慢しない」という2つのポイントがあるという。
3段階に分けると取り組みやすい。まず
- 感謝や配慮を伝え、
- 「私」を主語にして自分の思いを話し、
- 「こうしてほしい」という希望や提案を続ける。
今回の例で義母と話す時は、
- 「いつも子育ての手伝いをありがとうございます」
- 「ただ、おむつ替えで娘の大切な部分を異性であるお義父さんに見られることが、私にはモヤモヤします」
- 「お義母さんから見ないように伝えてもらえませんか」「別の部屋で替えてほしい」
などとなる。
大美賀さんは「家族の問題は、相手の気持ちに合わせなければいけないと考えて、感情の境界線があいまいになりやすい」と指摘。祖父母が孫を思う気持ちに合わせると「本当は見てほしくない」と言いにくくなってしまう。「自分を押し殺す付き合いは長続きせず、我慢が怒りに変わるかもしれない。最初は勇気がいるが、人間関係を保つためには自己表現が大切」とアドバイスした。
読者からは共感多数「大人が嫌なことは子どもも嫌」「祖父母手帳を見せて」
保育園でのおむつ替え ついたて使用
寄せられた回答には、相談者に共感する意見が目立った。「大人が嫌なことは子どもも嫌なのが当然」と書いたのは三重県伊勢市の女性(71)。保育士を長年務め、園内でのおむつ替えは20年ほど前から、ついたてを使って他の人に見えない場所でしていたという。
「年齢が上の世代は無頓着な場合が多い。でも、年を取っておむつを替えてもらう時に、人に見られたくはないはず。赤ちゃんのおむつ替えもプライバシーや人権を大切にするべきではないか」と指摘する。
世代間の違いを解説するパンフレット
名古屋市緑区の女性(66)は「若い世代には、小さな子を男性に預けることは嫌だという人が多い。着替えを見られたくない人も、私たちの年代が思うより多いかもしれない」と考える。
子育ては世代間で感覚や習慣が異なることもあり、「祖父母手帳」などの名前でパンフレットを作っている自治体もある。名古屋市の場合は、かつてと今の育て方が異なる例として「赤ちゃんの食事がレトルトでも愛情がないわけではない」「大人が使った箸などの共有は虫歯菌も与えることになるのでやめましょう」などと記載している。
女性の友人は、孫の母親から「内容の通りにできるまで赤ちゃんには触るな」と言われたという。「考えの変化を上の世代が意識した方がいい。今の子育てを学ぶために、パンフレットを見てみては」と勧める。
【編集チームから】質問は2022年12月3日に公開していたものです。2023年2月10日に回答を掲載しました。
友達との外出が多く、その都度小遣いを欲しがる中学生の娘
外食や映画鑑賞、遊園地など、中学生の娘が友達と出かける機会が増えました。仲良くなれるのはいいですが、その都度小遣いを欲しがります。家族の時間も減って妹は遊んでもらえず寂しそうで、もう少し頻度を落としてほしいです。どんなルールを決めたらいいでしょうか。(愛知県、41歳)
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