いまだ根深い「共働きなのにワンオペ育児」 誰もが生きやすい働き方へ The Economist×東京すくすく対談で感じたこと
男は仕事に行き、女は家庭を守る
ブルク記者が来日した2016年は、保育園の待機児童問題が深刻だったころ。保活に落ちた母親がブログに怒りを露わにした「保育園落ちた日本死ね」というフレーズが流行語大賞トップ10に入った年です。全国で保活に敗れた母親たちの心に火をつけ、安倍晋三首相(当時)に向けた国会前での抗議活動や保育施策の充実を訴えるネット署名といった社会の大きなうねりとなりました。
そんな年に、ブルク記者が書いた記事のタイトルは「Who’d be a working mother in Japan?」(誰が日本でワーキングマザーになりたい?」
来日当時、妊娠5カ月だったブルク記者は、取材で出会う人に「夫はフリーランスで子育ての大半を担うので、産後は復帰する」と伝えても眉をひそめられたそうです。「女性の約70%は家族を育てるために10年以上仕事を離れており、復帰する人はほとんどいない」という日本の現状を挙げ「男は仕事に行き女は家庭を守る、他の先進国よりもはるかに古い価値観だ」と指摘していました。
パートナーが育児をするのは当たり前
ブルク記者を迎える前にこの記事を読み、「日本はあれから保育園にどこかしらは入れるようになり、女性の職場復帰は珍しくない。さらに育休を取る男性も増えてきた」と伝えることを楽しみにしていました。
ただ、何げない会話の中で口をついて出た言葉は「パートナーは子育てに協力的ですか?」。私の中に、共働きでも母親の方が家事育児を担う、という刷り込みがありました。
ブルク記者は「協力的というか、普通に育児をしています。『すごいね』とよく言われますが、彼の子どもなんだから彼の仕事です」と苦笑い。「日本はまだそのレベルには行けていない」と伝えると、「どこの国もそうだと思いますよ、日本ほどではないけれど、まだ女性が多くを担っている」と言われてしまいました。
「日本ほどではないけれど」、重い言葉です。
保育園に子どもを預けてフルタイムで働く女性は増えてはきたけれど、それでもまだ、退勤後の子育てを担うのは母親という家庭は多いのではないでしょうか。「仕事をしていても、両親ともに子育てをするのは当たり前」と胸を張れない日本は、発展途上にあることを改めて思い知らされました。
夫婦だけでは解決できない働き方改革
子育てにまつわる負の言葉は次々と生まれています。「産後クライシス」「マタハラ」「ワンオペ育児」「子持ち様」…。最近では、育休を取りたい父親が上司の理解を得られない「パタハラ」。
10月にあった国連の女性差別撤廃委員会でも、ある委員から「教育、雇用、生活、家庭の中にはまだ家父長制的な制度が顕著に残っている」「教科書には、母・祖母として家族の面倒を見る描写がいまだにある」と鋭く指摘されました。
「共働きなのにワンオペ育児」は、夫婦間のやりくりだけで解消できるものではないと思います。長時間労働の是正、時間や場所に関して柔軟な働き方、いつでも急な休暇を取れる組織体制・・・。子育て世代のためだけではなく、誰もが生きやすい働き方へ社会全体で解決すべき課題です。
みなさんのご家庭は、共働きワンオペ育児でしょうか。どう乗り切っているのか、社会はどう変わるべきか、ぜひ「すくすくボイス」にご意見お寄せ下さい。