中学生の裸が拡散され「3万払え」…SNSの落とし穴、親が防ぐには〈子どもとデジタルライフ〉

LINE友達募集中の「中2女子」とビデオ通話したら…

 「LINE友達募集中です!」。SNSのID交換掲示板で見つけた書き込みにつられて、同学年の女子を名乗る相手とLINEでやり取りするようになった中学2年男子。何度か連絡を取り合ううちに、その女子が求めてきたのはビデオ通話で裸を見せること。男子は応じた。

 さらに、勧められてインストールしたアプリは、スマホの連絡帳を抜き取られる不正アプリだった。連絡帳に登録された友人たちに自分の裸の画像が送信された上、それを見た友人には「アプリで動画を見たから」と3万円の請求が届いた―。友達募集をしていたのは実際は中2女子ではなく、悪意のある大人と推測されるという。

大人には当たり前でも、きちんと教えなければダメ

 中学生のスマホ利用に関するこんな衝撃的な事例が紹介されたのは、3月にインターネットセキュリティー大手の「トレンドマイクロ」(東京都渋谷区)が開いた保護者向けの講座だ。参加者からは「うちの子も知らない人とやりとりしていた」という不安や、「アプリの細かい規定を読まずに同意してしまったことがある」と自らを反省する声が上がった。

 講師を務めた同社社員の中村江里さんは、「ネット上で知らない人と交流しない」「プライバシーをさらさない」「怪しいアプリはダウンロードしない」といった大人には当たり前のことでも、「初めてスマホを手にした子どもたちにはきちんと教える必要がある」と強調した。

スマホ所有率が急上昇 中学生78%、高校生99%

 内閣府の最新の調査では、自分専用のスマホを持っているのは、小学生では35.9%だが、中学生では78%と8割近くに急増。高校生は99.4%とほぼ全員が持っている。こうした中、東京都が開設するネットや携帯電話に関する相談サイト「こたエール」への相談件数は中学生になるとぐっと増え、トラブルや悩みの内容も多様化している。トレンドマイクロも昨年1月から、主に自社のソフトを利用している人を対象に、「こたエール」に寄せられた事例や、自社の調査などを元に、具体例を出しながら、保護者に注意点を伝え、グループワークで体験談や対策を話し合ってもらう講座を開いている。

 中高生のスマホ利用で保護者が心配するのは、冒頭のようなトラブルのほか、「使いすぎ」により、勉強や家族との団らんなど、他のことができなくなること。トレンドマイクロが使いすぎやトラブルを防ぐ方策として挙げるのが、「親子の話し合いと約束」「テクノロジーの利用」の2点だ。

トラブル防止には「ルール」と「テクノロジー」を

 同社の社員でこの世代の子どもがいる家庭では、「平日30分、休日1時間まで」「家では親がいる場所で使う」といったルールを決めていることが多いという。講座で同社の狩野園佳さんは「ルールは家庭によって違っていい。中高生は親には相談しなくなる年頃。『こたエール』など、信頼できる相談先を伝えるようにしてほしい」と呼びかけた。

 スマホ利用の低年齢化を受けて、子どもを守るためのソフトも次々と登場している。こうしたソフトを使って、アプリの使用やインストールの制限、出会い系やアダルトサイトなど子どもには有害なサイトを遮断するフィルタリング、ゲームなどの課金制限などをしておきたい。大手携帯電話キャリア会社は無償でフィルタリングアプリも提供している。

 使いすぎについては、アンドロイド向けのアプリ「デジタル・ウェルビーイング」、iPhoneの「スクリーンタイム」という機能を使えば、一定の時間はスマホを使えないよう設定したり、どのぐらいの時間利用しているかを確認したりできる。

受講した親が実感したのは「子どもと向き合う必要性」

 保護者向け講座に参加した親たちからは、使い方を話し合うなど、子どもと向き合うことの必要性を実感したとの声が聞かれた。

 横浜市の会社員須永敦さん(44)は、中学1年の長女に昨年11月、スマホを持たせた。「リビングで」「夜9時まで」など使い方を決めて、居間のホワイトボードに書き出させたが、「親の帰りが遅い時などルールを守り切れていないようだ」と心配する。講座を聞き、「年齢的に難しくなるが、スマホの使い方は話し合いを続けたい」と決意を新たにしていた。

 世田谷区から参加した女性会社員(43)の長女は小学5年生。まだスマホは持たせていないが、親の目が届かないところで、SIMカードを抜いた古いスマホを使い、自宅のWi-Fi環境で母親のアカウントを使ってオンラインゲームをしていた。ゲームの運営会社から母親のアドレスにメールが届いたことで発覚したという。「専用のスマホを持たせることも考えているが、親に見せられないやりとりはしない、親はいつでも見る権利があることをはっきりさせて使わせていきたい」と話した。

 スマホを持ち始めるのは、親に反発したり、言うことを聞きたがらなくなる年頃であることが多い。「誓約書」や「契約書」などを一緒につくり、徹底してビジネスライクに話し合いを進めるのも一手だ。

 特集「子どもとデジタルライフ」では、子どもや親自身にとって、より良いデジタルメディアとの付き合い方について考える記事を随時掲載します。