映画「わたしはダフネ」 ダウン症という特性ではなく彼女自身の魅力にひかれる、娘と父の物語
母を失い、ぶつかり合って、わかり合う
「父と娘の関係性を通して、隣に誰かがいて初めて超えられるものがある、ということを描きたかった」。ボンディさんは作品に込めた思いを語る。
喪失感と、娘とどう暮らしていけばいいのか不安にさいなまれる父ルイジ。一方、同僚や友人らの支えで日常を取り戻していく楽天家のダフネ。2人は、ぶつかり合い、いたわり合いながら、再生への道のりを歩んでいく。
自伝を書き、講演もするカロリーナさん
エネルギッシュでおちゃめなダフネを演じるのはカロリーナ・ラスパンティさん(37)。ボンディさんが映画の構想を温める中で、自伝小説を出したり、講演したりするカロリーナさんをSNSで知り、出演を依頼した。プロの俳優ではない彼女の自然な感情を引き出そうと、物語の筋を知らせたり、脚本を見せたりはあえてせず、撮影場面ごとに内容を要約し、せりふを伝える手法で撮影した。
「ダウン症を描きたかった作品ではない」とボンディさん。だが、自身はこの映画をつくる中で「ダウン症の人に持っていたイメージががらりと変わった」という。「私たちが撮影の中で変化したのと同じように、映画を見ているうち、ダウン症という特性はどうでもよくなり、ダフネという人にひかれていく、彼女との関係性が変わっていく、という経験をしてほしい」と話す。
「わたしはダフネ」は東京都千代田区の岩波ホールで8月20日まで上映中。名古屋市中区の伏見ミリオン座では7月9日から上映される。
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「障害を乗り越えて」と違う…引き込まれた
ダフネの顔を見ればすぐにダウン症と分かります。でも、ことさらその説明はなく物語は進んでいく。「障害を乗り越えて」みたいな作品でないところに、何をどんなふうに伝えるのかな、と引き込まれました。
親子であっても、友人であっても人は関わらなくては分かり合えない-。そんなメッセージを感じ取り、共感しました。障害のある子が自分のもとにやってきた時、ルイジが感じた不安や戸惑いは私も同じでした。でも、深く関わることで、みんな同じ人間なんだ、と心の底から理解できるようになっていきました。
親の想像をはるかに超えた成長を見る喜び
障害のある子の子育てでは特に、親の想像をはるかに超えた成長を見せてくれる「ごほうび」のような瞬間があります。映画からも、そのことを感じられ、温かな気持ちになりました。
ダフネが生き生きとスーパーで働き、同僚たちも彼女を特別視せず、自然と付き合っているのも印象的でした。そういう形が障害者と共生する社会なのだとしたら、やはり子どもの頃から、いろんな人が一つの場所にいられることは大事。映画で見ていいな、と思うだけでなく、社会の中でありふれた風景になるといいなと思いました。