映画「わたしはダフネ」 ダウン症という特性ではなく彼女自身の魅力にひかれる、娘と父の物語

(2021年7月7日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
子育て世代がつながる
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「わたしはダフネ」の一場面 ©2019, Vivo film – tutti i diritti riservati

 「障害の理解」、「障害者との共生」の本当の意味とは? そんなことを考えさせられるイタリア映画「わたしはダフネ」が全国で順次公開される。突然母を亡くしたダウン症の女性ダフネと初老の父が悲しみを乗り越え、互いを理解していく姿を描いた物語。監督のフェデリコ・ボンディさん(46)は、主演を務めたダウン症の女性との作品作りを通して「ステレオタイプが消え去った」と振り返る。

母を失い、ぶつかり合って、わかり合う

 「父と娘の関係性を通して、隣に誰かがいて初めて超えられるものがある、ということを描きたかった」。ボンディさんは作品に込めた思いを語る。

 喪失感と、娘とどう暮らしていけばいいのか不安にさいなまれる父ルイジ。一方、同僚や友人らの支えで日常を取り戻していく楽天家のダフネ。2人は、ぶつかり合い、いたわり合いながら、再生への道のりを歩んでいく。

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©2019, Vivo film – tutti i diritti riservati

自伝を書き、講演もするカロリーナさん

 エネルギッシュでおちゃめなダフネを演じるのはカロリーナ・ラスパンティさん(37)。ボンディさんが映画の構想を温める中で、自伝小説を出したり、講演したりするカロリーナさんをSNSで知り、出演を依頼した。プロの俳優ではない彼女の自然な感情を引き出そうと、物語の筋を知らせたり、脚本を見せたりはあえてせず、撮影場面ごとに内容を要約し、せりふを伝える手法で撮影した。

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フェデリコ・ボンディ監督(ザジフィルムズ提供)

 「ダウン症を描きたかった作品ではない」とボンディさん。だが、自身はこの映画をつくる中で「ダウン症の人に持っていたイメージががらりと変わった」という。「私たちが撮影の中で変化したのと同じように、映画を見ているうち、ダウン症という特性はどうでもよくなり、ダフネという人にひかれていく、彼女との関係性が変わっていく、という経験をしてほしい」と話す。

 「わたしはダフネ」は東京都千代田区の岩波ホールで8月20日まで上映中。名古屋市中区の伏見ミリオン座では7月9日から上映される。

ダウン症の次男を育てる奥山佳恵さん「周囲が特別視しない”共生”がいい」

 小学4年の次男がダウン症で、その子育てから感じることを本紙「子育て日記」で連載している女優・タレントの奥山佳恵さん(47)=写真=に映画の感想を聞いた。

「障害を乗り越えて」と違う…引き込まれた

 ダフネの顔を見ればすぐにダウン症と分かります。でも、ことさらその説明はなく物語は進んでいく。「障害を乗り越えて」みたいな作品でないところに、何をどんなふうに伝えるのかな、と引き込まれました。

 親子であっても、友人であっても人は関わらなくては分かり合えない-。そんなメッセージを感じ取り、共感しました。障害のある子が自分のもとにやってきた時、ルイジが感じた不安や戸惑いは私も同じでした。でも、深く関わることで、みんな同じ人間なんだ、と心の底から理解できるようになっていきました。

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©2019, Vivo film – tutti i diritti riservati

親の想像をはるかに超えた成長を見る喜び

 障害のある子の子育てでは特に、親の想像をはるかに超えた成長を見せてくれる「ごほうび」のような瞬間があります。映画からも、そのことを感じられ、温かな気持ちになりました。

 ダフネが生き生きとスーパーで働き、同僚たちも彼女を特別視せず、自然と付き合っているのも印象的でした。そういう形が障害者と共生する社会なのだとしたら、やはり子どもの頃から、いろんな人が一つの場所にいられることは大事。映画で見ていいな、と思うだけでなく、社会の中でありふれた風景になるといいなと思いました。

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