サッカー元日本代表 大久保嘉人さん 1年弱の親子二人暮らし 家事と子どもの成長に向き合って
現役最後に初の「子連れ単身赴任」
現役最後の2021年シーズンは、J1セレッソ大阪でプレーすることが決まり、横浜に妻と4人の息子を残して大阪に単身赴任するつもりでした。すると、当時小学4年の三男が「ついていく」と言って聞かない。シーズン中の1年弱、初めて子連れ単身赴任をすることになりました。
何も考えてなかったんですよ。でも、いざ二人生活が始まると「何か食べさせてあげないと死ぬなぁ」って。最初は朝ご飯でインスタントみそ汁をつくると、三男に「これほぼお湯だよ」って言われました。具の袋は入れたんですが、みその袋を入れることを知らなかった。
そこからがスタート。料理は「食べたいな」と思うものの食材を妻に相談し、作り方をYouTubeで調べました。調味料は「これくらいかな」と感覚で。太刀魚の煮付けをつくると三男は「おいしい」と言ってくれ、うれしかった。遠足で弁当を持参する日には、キャラクター柄の弁当を用意。大事な試合に臨む前日と同じように、作り方を何度もイメージしました。
二人だから、小さな成長に気づく
三男との生活では、成長を間近で見ることができました。三男はサッカーの練習から帰ると、スパイクの土を落として家に入るようになったり、朝早くにご飯を食べて一人で出かけられるようになったり。二人だからこそ、小さな成長に気づけたと思います。
横浜で妻と暮らしていた時は、何もしませんでした。料理や洗濯、掃除、子どもの宿題…毎日やるのは本当に大変。再び家に帰った今は、現役時より忙しくなり、何もやってないけれど、洗濯やごはんのありがたみが分かります。
「友達のような父親」になりたい
子どものころは、福岡県の団地で姉、妹と5人家族で育ちました。トラック運転手の父は優しく、毎日一緒に風呂に入り、同じ布団で寝ていました。母は元バレーボール選手。父母は勝負事に厳しく「サッカーでは誰にも負けるな」と教えられました。裕福ではありませんでしたが、強豪の国見中学・高校に下宿をさせてもらい、「両親を楽にしたい」とプロを志しました。
息子たちはサッカーをやっていますが、ああしろ、こうしろとは一切言いません。自分は子どものころ、怒られるとやる気をなくしていた。なるべく見守り、何か聞かれたら経験を伝えています。
なりたいのは、友達のような父親。昔、父は優しかったけど「友達とけんかした」とかは言えなかった。何でも言ってくれた方が、楽しくないですか。息子とは公園で一緒にサッカーしたり「学校は楽しいか?」「彼女は?」と積極的に話しかけます。何でも言い合えるのは心地よく、気持ちいいじゃないですか。
大久保嘉人(おおくぼ・よしと)
1982年、福岡県生まれ。サッカー元日本代表。現在はタレント。セレッソ大阪やスペイン、ドイツのクラブ、川崎フロンターレなどで活躍後、2021年にセレッソに復帰し、同年引退。J1最多得点(191点)を記録。代表60試合出場6得点。2010、2014年ワールドカップに出場。家族は妻と5~17歳の息子4人。
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