〈中倉彰子さんの子育て日記〉69・反抗期にため息ばかり

(2018年11月16日付 東京新聞朝刊)

 今月、女流棋士の大庭美夏さんの長女・礒谷真帆さん(16)が、女流棋士としてデビューしました。実力も高く評価されていて、これからの活躍が期待されます。

 大庭さんは最初、お子さんには直接将棋は教えず、ご主人と楽しく将棋を指している様子を見せていたそうです。

 両親が楽しそうに将棋を指していたら、子ども心に「なんだかすごく楽しそう!」ってなりますよね。「将棋=楽しい」という気持ちを保ったまま、将棋に取り組んでいけたのかもしれません。

「思春期」+「反抗期」 私も父のアドバイス聞けなかった…

 さて、わが家の中学1年生の長女は現在、「思春期」+「反抗期」の真っただ中、自分の中学生のころを思い出します。私は特に父親に反抗をしていました。

 当時は週末、車で1時間くらいかけて、父と妹と3人で、東京・千駄ケ谷にある将棋会館の道場に通っていました。私の将棋を後ろから見ている父は、帰りの車中で「あそこは〇〇の方が良かったんじゃないか?」。私はアドバイスを素直に聞くことができず、「それはお父さんの意見でしょ。お父さんが合っているとは限らない」。エスカレートして、口論になったことが何度もありました。

長女とバトルの日々 ほかの家庭はどうしてる?  

 時は流れ、今は私と長女が日々バトルを繰り広げています。スマホの使い方、妹弟との接し方など原因はさまざま。わざとこっちを怒らせようとする言葉に、ついカッとなり反応してしまいます。お互い頭に血が上り、声も大きくなるので、間違いなく近所にも聞こえているはずで、正気に戻ると、とても恥ずかしい気持ちになります。

 私が何か言うと「それはママの意見でしょ。私はママの言ってることが合ってるとは思わないから」。どこかで聞いたセリフ。私の言うことは、なかなか聞いてくれません。

 娘のためを思って言っているのに、娘にとっては煩わしい親の説教にしか聞こえないのでしょうね。言い合いをしている時は、つい私も同じ土俵に立ってしまいます。将棋では、相手の立場で考えることが大事と言われますが、私にはそれが足りない、とため息ばかり。ほかの家庭はどうなんだろう…。

 先日、父が遊びに来た時に、長女とのバトルを見て「すごいなー。彰子はこんなことなかったよな」。え、お父さん忘れてるの? 当時は大変でも、過ぎ去ってしまえば、そういうものなのでしょうか。(プロ棋士)