父の日のプレゼント 僕は親孝行できているのだろうか?〈清水健さんの子育て日記〉62

(2024年6月26日付 東京新聞朝刊)

たったひとりの父親。寝不足や筋肉痛になったっていい

息子から小さな声で「ありがとう」

 運動会の前夜、親子ふたり運動会がはじまった。僕が仕事で行けないことを伝えると「ビデオじゃなく、一番近くで見て!」と息子がダンスをはじめてくれた。この曲が終わったら次の曲をかけてね!と僕に指示を出し、汗をかき、表情も真剣に「ここは移動しているところだからね!」との解説付き。うれし過ぎたふたりだけの運動会。

 父の日、息子は僕に似ている。ソワソワしながら何か言いたそう(笑)。「何?」って聞いたら「ありがとう」って小さな声で。「えっ?」と聞き返しても、「わかってよ!」の雰囲気。これが僕たち親子。

 少年野球チームに入って2カ月。朝5時に起きて「練習行かない?」と僕を誘い、誰もいない公園ではじまる親子ふたりの自主練習。先日、初めて試合で出塁し、盗塁を決め、フライを捕り、スクイズを成功させた。息子が夢中になれることを見つけ、親子で体を動かし、一緒に緊張もできる。このことが、何よりの父の日のプレゼント。

「家族」だからこそ言えないことも

 僕はどうなんだろう。母親に対して、親孝行できているのだろうか。僕のことで心配をかけ、息子のことでも心配をかけ続けている。妻がいなくなってしまい、生後112日の息子を抱っこしながら、「どうしたらいい? どうなっていく?」と、僕以上に将来に対して不安になったと思う。でも、そんな不安は一切見せず、正直、体もしんどくなってきているとは思うけれど、毎日、一番に息子のことを考えてくれている。

 頼らなくちゃどうしようもない現実。でも「家族」だからこそ頼るのがつらいこと、言えないこともある。お互いに思っていても我慢し、言わないことだってある。家族だからこそ。とにかく元気でいてほしい。親孝行できるまで、息子とふたりで、ばあちゃんを安心させてあげられるまで。

 6月中旬の講演会は、男性おひとりでの参加も多かった。「今度は妻と来ます」とのうれしいお声がけ。ある方は「妻が乳がんとわかって9年目。今も治療は続いています。2019年2月にあった清水さんの講演会で、一緒に頑張りましょう!って言ってもらった言葉にどれだけ勇気をもらったか。今も感謝でいっぱいです。ものすごく精神的にしんどい時だったので」と話しかけてくださったけれど、僕は何ができているんだろうか。まだできていないことが多すぎる。

 「しんどくなったら周りに頼ってくださいね! ひとりじゃできないことはいっぱいありますから!」。そう講演会で言っている言葉は、今の自分の反省なのかもしれない。

清水健(しみず・けん)

 フリーアナウンサー。9歳の長男誕生後に妻を乳がんで亡くし、シングルファーザーに。

コメント

  • 清水さん、お疲れ様です。息子さんとても成長されましたね。息子さん野球されているのですね。大好きなパパに応援されているのは息子さんとても嬉しいと思います。いくら疲れていても息子さんの姿を見ると元気をもら
    南初子 女性 70代以上 
  • 家族皆様が優しさに溢れていますね。何よりも息子さんが 優しく、逞しく元気に成長されて行く姿が我が事のように嬉しく思います。お母様も1番の生き甲斐なんだと思います。 益々のご活躍を願っています。毎
    空 笑顔 女性 60代