父の日のプレゼント 僕は親孝行できているのだろうか?〈清水健さんの子育て日記〉62
息子から小さな声で「ありがとう」
運動会の前夜、親子ふたり運動会がはじまった。僕が仕事で行けないことを伝えると「ビデオじゃなく、一番近くで見て!」と息子がダンスをはじめてくれた。この曲が終わったら次の曲をかけてね!と僕に指示を出し、汗をかき、表情も真剣に「ここは移動しているところだからね!」との解説付き。うれし過ぎたふたりだけの運動会。
父の日、息子は僕に似ている。ソワソワしながら何か言いたそう(笑)。「何?」って聞いたら「ありがとう」って小さな声で。「えっ?」と聞き返しても、「わかってよ!」の雰囲気。これが僕たち親子。
少年野球チームに入って2カ月。朝5時に起きて「練習行かない?」と僕を誘い、誰もいない公園ではじまる親子ふたりの自主練習。先日、初めて試合で出塁し、盗塁を決め、フライを捕り、スクイズを成功させた。息子が夢中になれることを見つけ、親子で体を動かし、一緒に緊張もできる。このことが、何よりの父の日のプレゼント。
「家族」だからこそ言えないことも
僕はどうなんだろう。母親に対して、親孝行できているのだろうか。僕のことで心配をかけ、息子のことでも心配をかけ続けている。妻がいなくなってしまい、生後112日の息子を抱っこしながら、「どうしたらいい? どうなっていく?」と、僕以上に将来に対して不安になったと思う。でも、そんな不安は一切見せず、正直、体もしんどくなってきているとは思うけれど、毎日、一番に息子のことを考えてくれている。
頼らなくちゃどうしようもない現実。でも「家族」だからこそ頼るのがつらいこと、言えないこともある。お互いに思っていても我慢し、言わないことだってある。家族だからこそ。とにかく元気でいてほしい。親孝行できるまで、息子とふたりで、ばあちゃんを安心させてあげられるまで。
6月中旬の講演会は、男性おひとりでの参加も多かった。「今度は妻と来ます」とのうれしいお声がけ。ある方は「妻が乳がんとわかって9年目。今も治療は続いています。2019年2月にあった清水さんの講演会で、一緒に頑張りましょう!って言ってもらった言葉にどれだけ勇気をもらったか。今も感謝でいっぱいです。ものすごく精神的にしんどい時だったので」と話しかけてくださったけれど、僕は何ができているんだろうか。まだできていないことが多すぎる。
「しんどくなったら周りに頼ってくださいね! ひとりじゃできないことはいっぱいありますから!」。そう講演会で言っている言葉は、今の自分の反省なのかもしれない。
清水健(しみず・けん)
フリーアナウンサー。9歳の長男誕生後に妻を乳がんで亡くし、シングルファーザーに。
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