無理して息子に気を使わせていた 1年前とは違う笑顔で〈清水健さんの子育て日記〉63
買い物から帰らない祖母を心配して
取材をしていただく機会が多かったこの1カ月。言葉の伝わり方に悩むことはあるけれど、やっと、と言って良いと思う、妻の闘病中のこと、今のこと、これからのことを、冷静に話せている自分がいるような気がします。
僕の仕事中、息子は家で留守番。暑い中、買い物に行ったばあちゃんの帰りが遅かったようで、心配した息子は、ばあちゃんのLINEに「ちょっと時間が長いけど大丈夫?」。既読にならないことでさらに不安になり、「暑くてしんどくなっていない?」。荷物でLINEを見られなかったばあちゃんが、僕に「心配かけたけど、うれしかった。優しい子になってくれているよ」と報告をくれた。
これからまだまだ続く子育て。本当にまだまだです。でも、息子の成長に少し安心している僕がいて、これからのことも含めて自分が歩んできた人生を素直に話せるようになってきているのかもしれません。
「正直、昨年の今ごろの清水さんは…」
それでも、今の自分に何ができているんだろうかと考える時は多い。
何度か僕の講演会に来てくださっている方に思い切って聞いてみた。「最近の僕ってどうですか?」。「疲れていますよね? でも、前向きに見えますよ!」との返答。「正直、昨年の今頃の清水さんは、笑顔をつくっているなと感じました。声をかけることができなかったです」
その言葉を聞いて、ハッとした。自分に納得ができず無理をして、そんな自分が悔しくて、また勝手に自分にイライラする。その時も僕は笑っていただろう。でも、その笑顔の裏にあることも息子や家族には伝わっていて、息子にさえ気を使わせていたと思う。妻の闘病中、強がる僕を見て「心配をかけてはいけない」と、病と向き合っている妻に気を使わせてしまっていた時と同じように。
今、どれだけ疲れて帰宅しても、息子に誘われた5分後には、公園で息子と少年野球の自主練習をしている僕は、きっと、1年前の笑顔とは違う。日々の息子の成長が背中を押してくれているように思います。
子育てしているからこそ、考えないといけない自分のこと。精神的なことも、もちろん健康面も。「今の自分」が家族に与える影響は大きい。子育てのど真ん中にいるからこそ逃げずに向き合わなければいけない「これから」のこと。
簡単ではない、家族の人生と、自分の人生。今、何を一番に大事にしていますか。それぞれの答えがあって良い。答えがない子育て、答えがない親たちの人生。今、僕たちは笑えているだろうか。
清水健(しみず・けん)
フリーアナウンサー。9歳の長男誕生後に妻を乳がんで亡くし、シングルファーザーに。
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