「ランドセルが買えない」沖縄の調査、2割が回答
年収244万円未満の「困窮世帯」23%
沖縄県は今年1月、県内の1歳と5歳児の保護者を対象に、初の未就学児調査を実施。世帯手取り収入を世帯人数で調整した「等価可処分所得」が122万円未満の世帯を低所得層Ⅰ(困窮世帯)、122万~183万円未満を低所得層Ⅱ、183万円以上を一般層に分類した。分かりにくいが、困窮世帯は両親と子ども2人をモデルにした場合、年収244万円未満に当たる。
その結果、有効回答数4729のうち、困窮世帯が23%、低所得層全体は47%を占めた。小学校入学に向けて「学用品やランドセルの購入費用が不足しそうか」という問いには「あてはまる」「どちらかといえば、あてはまる」としたのが、5歳児の困窮世帯では40%を占めた。
さらに過去1年で仕事の忙しさや家計の苦しさで、子どもに病院や歯の治療を受診させなかったのは5歳児の困窮世帯では27%、1歳児の困窮世帯では18%を占め、保護者自身は困窮世帯全体で約半分を占めた。
子どもの貧困率29% 全国では16%
今回の調査は2015年度の沖縄子ども調査、16年度の高校生調査に続くもの。子ども調査では全国の貧困率16%に対し、沖縄県が29%と大きく上回ったことが衝撃を与えた。
今回の調査結果について、県子ども未来政策課の担当者は「沖縄では完全失業率も非正規雇用者数の割合も、全国比でずっと厳しい状況が続いている。今回の調査で、未就学児と保護者の厳しい生活実態が明らかになった」と話す。
加えて所得にかかわらず、父親の約4分の1が週60時間以上の長時間労働に従事していることや、1歳児の母親の働く割合が8割近い(全国平均は約5割)点についても懸念した。
「知事が基地反対だと、国が補助金を削減」
調査に協力した沖縄大の加藤彰彦名誉教授(児童福祉論)は「乳幼児期は人間形成上、とても大事な時期。この時期に親が低賃金の長時間労働などで、子どもに十分関われない影響は大きい」と語る。
貧困の理由については、歴史的に米軍の存在が県内経済の発展を妨げてきたことに加え、「基地反対の革新知事が出ると、国が露骨に補助金を削減するなど、国が経済状況を追い込んできた」と指摘する。
二階氏の「食べるのに困るうちはない」発言に絶句
一方、自民党の二階幹事長は先月26日、少子化問題に絡んで「食べるのに困るようなうちは今はない。こんな素晴らしい幸せな国はない」と発言した。
この発言について、加藤氏は「何と言っていいのか…」と絶句しつつ、「全国で少子化が進む中で、沖縄は出生率が高く、困窮層も子育てをしている。国は沖縄の乳幼児段階から親の就労支援、補助、貧困や孤立化を防ぐ対策をし、全国のモデルとしていくべきではないか」と提起した。
15年に同県内で初の子ども食堂を開設した「ももやま子ども食堂」(沖縄市)の白坂敦子理事長は二階氏の発言について「あまりにも不勉強だ。当たり前のように生活し、食事ができる家庭しか見ていない」と憤る。鈴木友一郎副理事長も「国は社会政策として、困窮状態にある子どもや親の支援をしていかないと。安心して子育てができるようにしていかないと、今後の日本社会は回らなくなる」と語気を強めた。