DV家庭には子ども虐待がある 民間シェルターは「私」を取り戻すための場所です
心愛ちゃん事件も結愛ちゃん事件も
―子どもへの虐待事件で、DVも判明するケースが相次いでいます。
千葉県野田市の栗原心愛(みあ)ちゃんや、東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが両親からの虐待を受けた末に亡くなった事件では、いずれのケースでも母親も夫からDV(配偶者間の暴力)を受けていました。子どもへの虐待とDVは、どちらも相手を思い通りに支配するための暴力で、同じ構造。DVのある家庭には子ども虐待があるのです。
被害を受けていても、それに気づき声を上げるのが難しいのがDV。「おまえのためだ」などと暴力や暴言を正当化されるうちに、罪悪感にとらわれ、自尊心や主体性を奪われるから。親密な関係の中で起きるため、第三者が気付きにくいものです。
―DVを受けている親が子どもを守るのは難しいのでしょうか。
被害者は圧倒的に女性です。夫の機嫌をとることだけに一喜一憂し、子どもの世話すらできなくなることもあります。実家や友人との関係を断たれ、外部に相談できないまま、事態が悪化することも多い。
そういう人たちのためにあるのが、私たちのようなシェルターです。直接連絡してくる人もいれば、行政機関の紹介などで来る人もいます。中には、「様子がおかしい」と気づいた近所のおばあさんに助言されたのをきっかけに、子どもと一緒に逃げて来た女性も。身近な人が被害に気づき、働きかけることの大切さを感じます。
一人で悩まず、助けを求めてほしい
―民間シェルターとはどんな場所なのでしょうか。
シェルターをやっていると「助けを求めることは恥ずかしいことだ」「妻は夫を立てるものだ」などと我慢してしまっている女性が多いことが見えてきます。周囲に相談したら、「あなたが選んだ相手でしょ」などとかえって責められ、声を上げにくくなった人もいます。背景には女性に抑圧的な社会構造や価値観があります。
でも、暴力を受けるのはあなたのせいではない。ささいなことだと感じても、一人で悩まないで助けを求めてほしい。「Saya」はインドネシア語で「私」を意味します。ここで周りの人とつながることで、親も子も「私」を取り戻してほしいと思っています。
DV被害者向けの民間シェルター
DV被害者が緊急避難できる施設の運営団体は全国に約100あり、一時保護のほか心身の回復支援、自立支援などを行う。「Saya-Saya」は月曜午後6時半、木曜午後2時、金曜午後1時半から、各2時間の電話相談=03(6807)8443=も実施。
[元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年11月17日]
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