「子どもホスピス」を都内につくろう 難病を抱える子と家族が安心して過ごせる場所 長男を亡くした母がNPO設立
高校2年で発症、大学進学も決まっていたが
佐藤さんは17年7月、当時19歳だった長男陸(りく)さんを骨肉腫で亡くした。テニスを頑張っていた息子が肩の痛みを訴えたのは、その約2年前の高校2年の秋。大学病院で診断を受け、抗がん剤治療や8時間に及ぶ手術を受けた。高校3年の冬に再発。推薦で大学進学も決まっていたが、徐々に歩けなくなり、自宅に戻った。
夫と交代で看病し、誰にも相談できない孤独感、経済的な負担。それにも増して、日に日に状態が悪くなる息子を見る精神的なつらさが募った。20歳の誕生日の3日前、陸さんは息を引き取った。
亡くなる前、欧米には子ども向けホスピスが地域にあると聞いた。首から下が動かせなくなった息子について、佐藤さんは「本人も、周りも生き地獄だった。あの時、ホスピスを利用できていれば、家族もどん底に落ちずにいれたかもしれない」と振り返る。
難病や生命の危機ある子、全国に25万人超
日本財団によると、難病や生命の危険がある子どもは全国に25万人以上とされる。一周忌が過ぎたころ、佐藤さんは「こうした施設がもっと必要」と一念発起。今年6月、NPO法人「東京こどもホスピスプロジェクト」をつくった。
成人向けホスピスが末期がん患者らの緩和ケアなど終末期医療を行う施設なのに対し、医師や看護師、理学療法士、福祉、保育の専門家らによるチームで子どもの成長を支えながら、家族の看護負担を軽減、リフレッシュしてもらう施設を構想。イベント会社経営のノウハウを生かし、「車いすで乗れるメリーゴーラウンドがあって、ダンスショーが見られたりプラネタリウムを楽しめたりするような明るい施設」を目指す。
24日に概要説明の講演会 オンラインでも
寄付金で運営する形を考えており、施設開設までの目標額は3億~5億円。概要などを説明する無料の講演会を9月24日午前10時から、昭島市昭和町の森高ビルで開く。会場は定員20人。ビデオ会議システム「Zoom」でのオンライン参加(定員100人)もある。
佐藤さんは「今も病気でつらい思いをしている親子がいる。少しでも笑顔になれる瞬間を提供したい」と話す。講演会の申し込み、問い合わせは=電話042(546)3999=へ。
子どもホスピス
1982年に英国に設立された「ヘレン・ハウス」がモデル。学びや遊び、地域交流などを提供するとともに家族のレスパイト(小休止)ケア機能を併せ持つ。国内では2012年に大阪市の淀川キリスト教病院に誕生。2016年には同市に「TSURUMIこどもホスピス」もできた。横浜市でもNPO法人「横浜こどもホスピスプロジェクト」が来年開設予定で準備中。都内では、開設時の目的が同じだが運営形態が異なる施設として、国立成育医療研究センター(世田谷区)の「もみじの家」などがある。