「本当のお父さんじゃないくせに」…再婚家庭「ステップパパ」の悩みを共有しよう 男児殺害事件きっかけに交流会
「人ごととは思えなかった」
「本当のお父さんじゃないくせに」。男は犯行当日、男児からそう言われたという。裁判ではその時の心境を「絶句した」と述べた。
「人ごととは思えなかった」と振り返るのは、関東地方の押田さん(33)。男とは同い年で、事件当時9歳の息子を育てる継父という共通点もあり、「本当の父親という言葉に感じた恐怖心は理解できる」。事件をきっかけに、ステップファミリーならではの悩みを語り合う場を立ち上げた。
あだ名で呼ばれ、焦りも
押田さんは2017年、3年の交際を経て息子がいる女性と結婚。結婚前、息子とは「週末になると遊んでくれるお兄さん」のような関係だった。友人に「これでお父さんだね」と祝福され、「いい父親にならないと」と責任を感じた。
だが、どこまで親として踏み込んでいいのか分からなかった。「お父さん」ではなく、あだ名で呼ばれることにも焦りを感じた。理想の家族像と現実に悩み、養子縁組から1年もたたないころ、つい息子を強くしかった。自己嫌悪に陥り、これを機に気負うのはやめようと思い直した。まずは一対一の関係を築こうと、息子と2人で出掛ける機会を増やした。
すると、あだ名で呼ばれることも気にならなくなり、いつしか「お父さん」と呼ばれるように。母子の生活リズムが出来上がっていた中に突然新しい生活が始まり、「息子も大変だったと思う」。つらい時期を乗り越えた今では自然体でいられる関係で、どこか「戦友」のように感じている。
いい親に…無理しすぎた
同じ境遇の人と出会ったら、経験を共有しよう。そう考えていたところ、さいたま市の事件が起きた。息子に手を掛けた男の行為は「全く理解できない」。一方で「本当のお父さんじゃないくせに」という言葉は「自分が言われても動揺すると思う」。ただ、自身は先輩継父から「いつか言われる」と教えられて覚悟していた。被告にそうした助言をする存在がいなかったことを残念がる。
「ステップパパの研究会」への参加を希望される方はこちらのnoteをご確認ください。
「ステップパパの研究会」への参加方法|ステップパパの研究会 @step_papas_lab #note https://t.co/JimOHk0qN9
— ステップパパの研究会 (@step_papas_lab) January 18, 2020
事件翌月の昨年10月、当事者間で語り合う「ステップパパの研究会」(ツイッター名)を設立。対面とオンラインで5回の交流会を開き、各回とも5、6人が参加した。互いに「血のつながりがないからこそ、いい親になろうと無理をしすぎていた」などと打ち明け、少なからずストレスが緩和されたという。
再婚時の子どもの年齢や、離婚か死別かなど「家族の形」ごとに悩みは違うが、周囲に相談できる人がいなかった点は共通していた。「無理に親子の枠に縛られることなく、それぞれの家族の形が尊重される社会になってほしい」と押田さん。継親が悩みを打ち明けられる場が増えることを願い、交流会を続けていく。
子どもの気持ちにどう配慮するか 離婚・再婚後の家族に「学びの場」が必要です
「友達のような関係」も有効
裁判での男児の母親の証言などによると、男児は男に懐き、男も男児の宿題をみたり、相談に乗ったりしていたという。ただ、生活上の注意を男児が聞かないこともあり、男は「(昨年の)夏ごろから限界と感じ始めた」などと述べた。
一方、男児の実父は、男児の母親と男の再婚を機に、それまで定期的にあった男児との交流をやめたという。
事件について、野沢教授は男児と実父の交流が途切れたことと、継父である男がしつけを始めたことの2点に着目。「子どもは一見、継父との関係が良好でも急激な変化に対応できず、ストレスが大きい。継父にしかられることには抵抗感がある」と指摘する。
子どもが変化に適応するには、実父との関係を続けつつ、継父は「父親になろうとせず、しつけは母親に任せて友達のような関係を模索すること」も有効だとしている。
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