男の子を「男らしさの呪い」から解放する育て方とは? 弁護士・太田啓子さんが書いた「これからの男の子たちへ」が反響

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「これからの男の子たちへ 『男らしさ』から自由になるためのレッスン」

 性差別や性暴力に詳しい太田啓子弁護士(44)が、男の子を育てながら感じたことをつづったエッセイ「これからの男の子たちへ 『男らしさ』から自由になるためのレッスン」を出版した。男の子は乱暴なことをしても「やんちゃ」と言われるくらいで深刻な問題だと認識されないまま、「有害な男らしさ」に染まり、性差別的な社会を再生産しているとして「性差別をなくすために、男の子の育て方こそが大事」と語る。

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「男なら耐えろ」世にあふれる性差別を自覚するために

 太田さんは弁護士としてDVの離婚事件やセクハラ問題などに取り組みつつ、職場や学校、家庭など日本社会のあらゆる場面に存在する性差別や性暴力に関心を寄せてきた。一方、私生活で小学生の男の子2人を育てる中で、人気アニメに「男なら耐えろ」といった性差別的な表現がさらっと使われるなど、よちよち歩きのころから男の子が性差別的な価値観にさらされていると痛感した。

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「これからの男の子たちへ」の挿絵(イラスト:マシモユウ)

 社会から性差別をなくすには、男の子を性差別に自覚的な男性に育てることが必要だと考えた太田さん。性差別に気付かせるため息子にどんなふうに声を掛けているかや、男の子に知ってほしい性の知識などをエッセイ「これからの男の子たちへ」にまとめた。

対等なコミュニケーションには「感情の言語化」が必要

 男の子が少しくらい乱暴でもまあいいか―。「これからの男の子たちへ」では、その積み重ねによって男の子は力がものをいう人間関係のつくり方を身に付け、弱音を吐けなかったり女性より上のポジションでなければ気が済まなかったりといった「有害な男らしさ」につながると指摘する。

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「これからの男の子たちへ」の挿絵(イラスト:マシモユウ)

 そこから自由になるための鍵として「感情の言語化」に着目。恐怖や不安などの気持ちを言葉で表現することは、他人に共感する力につながり、女性を含めて他者と対等な立場でコミュニケーションするためには不可欠と考えるからだ。太田さんは息子が少しでも気持ちを言葉にしたら、「分かるー!」と共感していることを大げさにアピールし、言語化を促していると明かす。

「自分はレイプしない」ではなく、性差別の構造を知る

 メディアの性表現の読み解き方や、セックスをする前に男子に知ってほしいこと、セクハラをどう教えるかなど、男の子の子育てに必要な情報がぎっしり。SNSでは、子育てに悩む世代を中心に「モヤモヤしていた部分が整理できた」などと反響が相次ぐ。

 ただ、一番読んでほしいのは、中高生の男の子たちという。「男らしさの呪いから自由に生きてほしい。そして『自分はレイプしないからいい』ではなく、性差別構造の中でマジョリティー(多数派)の特権を持っていることを自覚し、性差別や性暴力にあらがってほしい」とエールを送る。大月書店、税別1600円。

〈関連記事〉「男子ってバカだよね」の積み重ねが性差別社会をつくる 10代に読んでほしい「これからの男の子たちへ」太田啓子さんインタビュー

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  • 匿名 says:

    暴力や性差別について子供に教えるのはいい事だと思う。ただ、片親が一方的に考えを押し付けるのではなく男親、女親の両方がいるのならば子供と同性の親の体験談なども交えつつ夫婦でも相談して教育方針を決めるべきではないでしょうか。

    女の子であれ男の子であれ同性にしか分からない事がある以上片親の考えだけで支配するべきではないと考えます。

  • koko says:

    うちの子YouTuber見ていて女の子の裸など見ているんですよね。どうしたら直せると思いますか?

    koko 女性 30代
  • 匿名 says:

    私は、女性から痴漢行為を山手線内で受け、それから電車や人混みが怖く、何故女性だけが特別扱いされるのか理解しかねます。
    会社内でも、男なんだから男のくせにハイスペ男子はと当然のようにセクハラ行為が行われていて、それをおかしいとさえ思わない女性が多いように感じます。
    妻が家事や育児をやらない人なので赤ん坊の頃から1人でワンオペ両立を必死にやってますが、世間の女性はもっと男は家事育児をやれと一緒くたにし、毎日やる私は日常的に男は稼いでなんぼという白い目で差別的に見てきて、子供と平日いるだけで説教してくる女性もいます。
    幼稚園や小学校のPTAでも軽視され、男がいるだけで嫌がる人も一定数おります。
    この記事を読み、率先する部類の人たちがこの程度の意識では、女性の偏った思考が相当程度に変わっていかなければ、参画社会なんて程遠いなと感じる内容でした。

      

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