埼玉で生後3カ月の乳児放置死 父親は家庭訪問を30回拒否していた あご骨折でミルク飲めず
母は支援を望んだが、父は強い拒否感
事件では、父親の裕喜被告(29)が傷害致死と保護責任者遺棄致死の罪で、母親あずさ被告(28)が保護責任者遺棄致死罪で、それぞれ今月10日に起訴された。
美里町によると、町はあずさ被告が未婚で次女を出産した2015年から、保健師が定期訪問するなどしていた。あずさ被告も支援を望んでいたというが、2019年7月ごろからは裕喜被告が町職員に応対するようになり、支援の申し出に「義務ではない」と激怒するなど強い拒否感を示したという。同年9月、町や児童相談所、警察などでつくる要保護児童対策地域協議会(要対協)は親子を支援対象にしたが、状況は好転しなかった。
“3カ月健診を受けなかったら安否確認”
あずさ被告は2020年5月、裕喜被告との子である三女と双子の妹の喜空ちゃんを出産した。その後も町は家庭訪問を申し入れる電話を30回したが、裕喜被告は新型コロナウイルス感染拡大などを理由に拒否。あずさ被告とは連絡がとれない状態が続いた。
一方で病院の1カ月健診や、7月下旬に親子が町保健センターを訪れた際の検査で、双子の発育に問題はなかった。8月23日と翌24日には、近隣住民から泣き声の通報を受けた児玉署員が子どもの体を確認したが、異常は見当たらなかったという。
要対協は同26日、双子が3カ月健診を受けなかった場合に安否確認することを決めた。予定の9月9日に未受診だったため、あずさ被告の親族に確認を依頼したが、親族も親子に会えないまま、喜空ちゃんは同11日に死亡した。起訴状によると、喜空ちゃんは8月ごろに裕喜被告から哺乳瓶を口に押し込む暴行を受けてあごを骨折。乳を飲むのが困難になり、肋骨(ろっこつ)も折れていたとされる。
面会を拒否するのは極めて危険な兆候
親の虐待が疑われるなど子どもを家庭から緊急に引き離す必要がある場合、児相は子どもを一時的に保護できる。ただ、今回のケースで美里町は「要対協としても虐待があるという認識はなかった」と説明。大沢建孔副町長は取材に「一時保護で子どもを親から引き離すことで、(行政と親の)関係が切れるのはまずいということもある」と話すとともに、「結果的に命を救うには(8月の)警察の接触から亡くなるまでの間に一時保護するしかなかった。児相にもっと強く働き掛けるべきだったか検証したい」と述べた。
児童虐待防止などに取り組む「シンクキッズ」(東京都中央区)代表理事の後藤啓二弁護士(61)は、「親が自治体などの面会を拒否するのは極めて危険な兆候。これまでの虐待死事件でも親が面会拒否していたケースが多い」と指摘する。
その上で「自治体や児相は面会を拒否されたら、すぐに警察と一緒に子どもの安否確認をしたり、場合によっては一時保護もできるようにすべきだ。親との信頼関係が重要だといっても、虐待されている子どもを放置しておくのはおかしい」とし、早い段階から、より踏み込んだ対応が必要だと訴えた。