児童相談所の児童福祉司は人材の奪い合い 国の新配置基準「人口3万人に1人」 関東1都6県で6割の自治体が未達成
児童福祉司とは
虐待されるなどした子どもの一時保護や、保護者の相談・指導などにあたる児童相談所の職員。社会福祉士や精神保健福祉士などの国家資格のある人や、児童養護施設などの福祉施設で一定期間実務経験のある人などが就くことができる。
17自治体に本紙調査 現時点で316人不足
国は児相の体制強化のため、人口4万人に1人以上だった基準を見直し、自治体に対し、来年度末までに新基準での配置を求めている。虐待対応件数の多い自治体はさらに、上乗せを求められる。
アンケートは、児童虐待防止推進月間の11月に実施。1都6県の児相は新基準で計2226人が必要だが、現時点で316人が不足していた。配置期限まで1年以上あるが、不足数が最多だった東京都の担当者は「虐待通告件数は増え続けており、達成のハードルは高い」と話す。加えて、特別区などでも児相を設置できるようになり2020年度以降、世田谷区、江戸川区、荒川区、港区の4区が新設、今後中野など各区でも順次開設予定だ。人事異動や公募などで増員に対応する自治体からは「必要な職員数確保に大変苦慮している」(千葉県)「今後福祉職の新規確保が困難になる」(江戸川区)との声も出ている。
児童福祉司の勤務年数も尋ねた。「1年未満から2年」の職員の割合は総じて高く、割合が最も高い77.8%が江戸川区、次ぐ72%が港区と、新設児相の高さが目立った。「人材育成が喫緊の課題」(千葉市)など、早急な対応を課題とする自治体が多かった。
23歳「子育て経験もない私が…」 若い福祉司をどう成長・定着させるかが課題
一人で常時100件を担当「悩みながら」
「児相との関わりを拒否する気持ちが強い家庭の親と子どもから話をどう引き出すか。悩みながらやっている」。都内の児相に勤務して3年目の児童福祉司の男性(31)はこう話す。
担当する事案は常時、100件ほど。この他に突発対応もある。虐待通告が寄せられれば、48時間以内に子どもの安否確認をするルールがあるからだ。別のエリアで虐待死事件が起きれば、担当する事案の点検などを上司から改めて指示され、緊張が高まる。「最悪の事態が自分の事案で起きないとも限らない。リスクの高まりを素早く察知できる力をつけなくては」
都内の児相で今年から児童福祉司として働き始めた女性(23)は、新人研修などを経て、教育担当の先輩と事案も担当する。「多くの事案に携わったベテランは判断も早い。社会人経験も子育て経験もない私が、どこまでできるだろうという不安はある」
アンケートでは、経験の浅い職員の増加を踏まえ、どんな対策を取っているか尋ねた。「新任に重点的に研修を実施」(世田谷区)「人材育成担当の職員を置き、面接や研修を実施」(港区)などの対策が挙がった。チームで事案に対応したり、過去の対応に基づいてリスク判定をするアプリを導入したりと、経験の浅い児童福祉司の負担を軽減している児相もある。
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