心愛さん虐待死を風化させない 野田市が虐待防止条例制定へ 明文化された行動規範とは
減らない児童虐待 教訓を生かす
野田市内の児童虐待の相談受付件数は2022年度が472件、2023年度は10月までで307件と減る兆しがみえない。条例は、心愛さんの犠牲により、市内で高まった虐待防止に対する意識を風化させないために制定する。
昨年10月、庁内準備委員会を設置し、調査研究と策定を進めてきた。児童虐待に加え、高齢者や障害者への虐待を含めた防止条例は、松戸市などが制定しているが、市や関係機関、地域社会の行動規範を細かく示しているのは全国的に珍しいという。
転出入先と連携、個別会議を義務化
条例案では、市が児童虐待の通告や相談を受けると、緊急受理会議を開いて対応を決め、当日中に児童の安全を直接確認しなければならないと規定。48時間以内に安全が確認できなかったり、虐待が疑われたりすれば、児童相談所や警察、消防に援助を求める。
児童の転出入で支援が途切れてしまわないよう、転出先・元に当たる市区町村との情報の引き継ぎ徹底を強調する。個別事案について協議する個別支援会議は、一時保護が解除される前や施設から帰宅する前などにも開催を義務付ける。
これらは、事件を受けて野田市が策定し、非公開の「児童虐待防止対応マニュアル」に準じており、すでに実施されている。ただ、事件を検証した「市児童虐待事件再発防止合同委員会」の委員長を務めた今村繁副市長は「職員の異動で会議などのルールが形骸化しないよう、細かい仕組みや手続きを条例に位置付けるのが目的。単なる理念条例にはしたくなかった」と条例化の意義を強調する。
市長「絶対に二度と起こさない」
心愛さんは小学校のアンケートで「お父さんにぼう力を受けています。先生、どうにかできませんか」と訴え、県柏児童相談所が心愛さんを一時保護したものの、その後、解除。学校側は父親から要求され、心愛さんのアンケートの回答をコピーして渡した。児相を含めた対応のずさんさや関係機関の連携の不十分さが指摘されてきた。
鈴木有市長は先月29日の定例会見で、心愛さんが父親からシャワーで冷水を浴びせられる虐待を受けていたことから、「毎日、(心愛さんを)思い出す。寒くなると特に。申しわけなかった、絶対に二度と起こさないという気持ちがある」と話した。
野田市女児虐待死事件
野田市の小学4年栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が2019年1月24日、自宅浴室で死亡した。心愛さんにシャワーで冷水をかけるなどの暴行を加え、十分な食事や睡眠を与えなかったとして、父親の勇一郎受刑者が傷害致死罪などで起訴され、2021年3月に懲役16年の東京高裁判決が確定した。心愛さんは事件の前、児童相談所に一時保護されたが、翌月に解除され、行政の対応も問題視された。
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