心愛さん虐待死の教訓は生かされているか 子どもの命を守るため、再発防止策を確実に実行しなければ

山口登史 (2020年12月24日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
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栗原心愛さんが父親からの虐待を訴えた学校アンケート

 昨年1月に野田市の小学4年栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が自宅で死亡した事件で、千葉地裁は3月19日、傷害致死などの罪に問われた父親の勇一郎被告(43)に懲役16年(求刑懲役18年)の判決を言い渡した。事件を巡っては、児童相談所や自治体など関係機関の対応不足が判明。千葉県内では事件後も同様の虐待死事件が起きている。

関係機関のずさんな対応

 勇一郎被告の公判では、実の娘に対し、しつけの名の下に行われた凄惨(せいさん)な虐待の様子が明らかとなった一方、被告は行為自体を否定したり、原因が心愛さんやその母親にあったと主張。量刑は、同種の事例を上回る重いものとなった。判決は「理不尽な支配欲から虐待を加え続けた。酌量の余地などみじんもない」と断罪した。

 勇一郎被告は、判決を不服として控訴し、来年1月19日から東京高裁で控訴審が始まる。

 事件を巡っては、千葉県柏児童相談所が心愛さんが一時保護中、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されていたのに保護を解除するなど関係機関によるずさんな対応が次々と判明した。

児童相談所職員を増員へ

 千葉県は一時保護所の定員を56人増やして171人とし、児相職員を2022年度までに約260人増員する計画を打ち出している。「子ども虐待対応マニュアル」も改定。子どもの一時保護解除を検討する際、判定会議を必ず開き、専門家の意見も踏まえ、解除が適切かどうか厳格に協議するようにした。

 虐待対応件数や一時保護児童数の増加を受け、千葉県社会福祉審議会は6月、現行の県立児相6カ所に加えて2カ所増設を求め、県は増設する児相の候補地選定や周辺環境調査などを進めている。

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児童虐待事案を想定した訓練を行う児童相談所の職員ら=君津市で

 見直しにより、中央児相の管轄から、印旛地域9市町を新児相に分離。中央児相は習志野、市原、八千代の3市を担当する。柏児相は柏、松戸、市川児相は船橋、鎌ケ谷の各市をそれぞれ分離し、松戸、鎌ケ谷の2市で新児相を設置する。船橋、柏の中核市2市は各市で独自に児相を計画している。

後を絶たない虐待事件

 千葉県が対策を進める中、元県職員の男性(24)=懲戒免職=が在職中に生後4カ月の長男を暴行し、重傷を負わせる事件も発生。虐待事件は後を絶たない。

 市原市では今年1月25日、生後10カ月の女児が衰弱死する事件が発生。保護責任者遺棄致死罪で起訴された母親(24)は、女児に乳児健診や予防接種を受けさせておらず、虐待をうかがわせるサインがあったが、市は9カ月にわたり一度も女児を目視で確認せず、外部からの情報提供も生かせなかった。

 市原市では第三者委員会により、対応の検証を進めている。再発防止策を作るだけでなく、確実に実行することが求められる。 

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年12月24日

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