虐待「非該当」でも相談対応件数に入れていた 川崎市が経緯説明とともに問題提起「国の定義があいまい」

北條香子 (2024年2月6日付 東京新聞朝刊)
 児童虐待相談対応件数について、川崎市は5日、こども家庭庁の調査に対し、国が示す記入要領に沿った報告ができていなかったと回答したとして、経緯を説明した。市担当者によると、虐待相談として受理したケースで、調査の結果「非該当」となった場合も、相談対応件数に計上していたという。担当者は、国が「児童虐待相談」として示している定義があいまいな点にも課題があるとして、「少なくとも県内では児童虐待の定義を統一して統計を取る必要がある」と見解を示した。

市の見解を説明する市の担当者=市役所で

こども家庭庁が全国の自治体を調査

 川崎市によると、従来参照してきた記入要領には「判定会議等の結果で、児童虐待相談には該当しないと分類されたものは含まない」などと書かれていた。市は虐待でないと判明した「非該当」の場合でも「児童虐待相談として受理した」と捉え、件数に計上していた。

 児童虐待相談対応件数をめぐっては、昨年10月、「非該当」を計上する自治体が多数あると東京新聞が報道したことを受け、こども家庭庁が11~12月、児童相談所を設置する全国78の自治体に確認した。

「虐待の恐れ」は? 基準の統一を

 先月26日、児童虐待相談の定義を「判定会議などで児童虐待防止法に規定する行為があると判断されたもの」とする解説を示し、適切な報告ができていなかったと回答した川崎市を含む20自治体に対し、国の要領に沿った2022年度の調査結果を修正して今月末までに再提出するよう求めた。

 川崎市の担当者は、判定会議では虐待行為として明確に認められるものだけでなく、虐待の恐れがあるとして支援をするケースもあると指摘。「虐待の恐れを入れるかどうか、判断基準を統一しないと統計上の正確性が保たれない」と述べた。

児童虐待相談対応件数とは

 児童相談所が相談を受け、援助方針会議の結果、指導や措置を行った件数。1990年度の統計開始から32年間、一度も減少することなく過去最多を更新し続けてきた。2022年度(速報値)は21万9179件(前年度比1万1510件増)。子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV」など6割近くを心理的虐待が占める。警察からの相談件数が半数以上。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年2月6日