小学校プール水流出、賠償請求はあり? 教職員アンケートで92%が「おかしい、理不尽」 これなら水泳授業はしないという校長も
ヒューマンエラー防止は自治体の役割
NPO法人School Voice Project (スクール・ボイス・プロジェクト)が「プールの水道代の賠償請求、あり?なし?」として9月8日~10月10日にインターネットで尋ね、各地の教職員114人が回答した。
賠償請求を「おかしい・理不尽だ」と回答した人は71%、「どちらかというと」を合わせると92%。「教師の業務とは授業を通して子どもを育てていく事。何が本務かが見失われている」「ヒューマンエラーが起こらないようにするのが自治体の役割なのに、個人の職員に責任を転嫁している」といった意見があった。
「(自分の自治体が)同じような対応になることが前もって確認ができれば、水泳の授業は実施させない」という小学校校長の意見もあった。
「過失に対して税金を補塡(ほてん)できない」として、「仕方がない・妥当である」を選択した高校教員もいた。
対策は?管理責任者の配置、民間委託
必要な対策として「教員以外のプール管理責任者を置く」(28%)、「公営や民間の屋内プールの活用を進める」「水泳の授業の廃止や民間委託を進める」(各22%)が挙がった。「教員が管理する前提で、ミスを防ぐ体制構築や研修を行う」は5%にとどまった。
勤務校のプール管理体制などを尋ねると、「施設の老朽化」を指摘する声が多かった。「体育科が緊張しながら管理している」「水の管理は、衛生的な面でも財政的な面でも多くの神経を使う。担当教諭が責任を負うのは大きな負担」との意見が寄せられた。
「複数確認を行わず、操作ミスで水がなくなったことがある」という小学校校長は、「水道料金支払いを命じられたら、辞職するつもりだった」と明かした。
調査したNPOの見解「大切なのは教員の勤務状況の改善では」
NPO法人School Voice Projectは学校現場の課題解決を目指し、2021年から活動。国の教育施策が打ち出された際などに教職員約1700人が登録するアンケートサイト「フキダシ」で生の声をすくい上げ、改善につなげようと発信している。
大阪市の小学校で教壇に立っていたことがある武田緑事務局長(38)は、「プールの流出事故は全国で起きているヒューマンエラー。教職員は業務で圧迫されており、プール管理の負担感は大きい」と指摘する。
川崎市教委の賠償請求には抗議の一方、損失に税金を充てるわけにはいかないとの意見もあった。
「判断は難しいが、大切なのは、市や市教委が今後、プール管理のマニュアル整備といった対応にとどまらず、教員の勤務状況の改善などに取り組む姿勢を示すことではないか」と話した。