小学校プール水流出、賠償請求はあり? 教職員アンケートで92%が「おかしい、理不尽」 これなら水泳授業はしないという校長も

北條香子 (2023年10月22日付 東京新聞朝刊)
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流出事故のあった川崎市立小学校の屋上プール(川崎市教育委員会提供)

 川崎市立小学校でプールの水を6日間にわたり出しっ放しにした教諭らに賠償請求した川崎市教育委員会の対応について、「おかしい・理不尽だ」と受け止めた教職員は9割超に上った。東京のNPO法人によるアンケート結果で分かった。大多数が「プールの管理は本来、教員の業務ではない」と考えている実態が浮かんだ。 

ヒューマンエラー防止は自治体の役割

 NPO法人School Voice Project (スクール・ボイス・プロジェクト)が「プールの水道代の賠償請求、あり?なし?」として9月8日~10月10日にインターネットで尋ね、各地の教職員114人が回答した。

グラフ プール水道代の賠償請求についてどう思う?

 賠償請求を「おかしい・理不尽だ」と回答した人は71%、「どちらかというと」を合わせると92%。「教師の業務とは授業を通して子どもを育てていく事。何が本務かが見失われている」「ヒューマンエラーが起こらないようにするのが自治体の役割なのに、個人の職員に責任を転嫁している」といった意見があった。

 「(自分の自治体が)同じような対応になることが前もって確認ができれば、水泳の授業は実施させない」という小学校校長の意見もあった。

 「過失に対して税金を補塡(ほてん)できない」として、「仕方がない・妥当である」を選択した高校教員もいた。

対策は?管理責任者の配置、民間委託

 必要な対策として「教員以外のプール管理責任者を置く」(28%)、「公営や民間の屋内プールの活用を進める」「水泳の授業の廃止や民間委託を進める」(各22%)が挙がった。「教員が管理する前提で、ミスを防ぐ体制構築や研修を行う」は5%にとどまった。

 勤務校のプール管理体制などを尋ねると、「施設の老朽化」を指摘する声が多かった。「体育科が緊張しながら管理している」「水の管理は、衛生的な面でも財政的な面でも多くの神経を使う。担当教諭が責任を負うのは大きな負担」との意見が寄せられた。

 「複数確認を行わず、操作ミスで水がなくなったことがある」という小学校校長は、「水道料金支払いを命じられたら、辞職するつもりだった」と明かした。

調査したNPOの見解「大切なのは教員の勤務状況の改善では」

 NPO法人School Voice Projectは学校現場の課題解決を目指し、2021年から活動。国の教育施策が打ち出された際などに教職員約1700人が登録するアンケートサイト「フキダシ」で生の声をすくい上げ、改善につなげようと発信している。

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Scool Voice Projectの武田緑事務局長

 大阪市の小学校で教壇に立っていたことがある武田緑事務局長(38)は、「プールの流出事故は全国で起きているヒューマンエラー。教職員は業務で圧迫されており、プール管理の負担感は大きい」と指摘する。

 川崎市教委の賠償請求には抗議の一方、損失に税金を充てるわけにはいかないとの意見もあった。

 「判断は難しいが、大切なのは、市や市教委が今後、プール管理のマニュアル整備といった対応にとどまらず、教員の勤務状況の改善などに取り組む姿勢を示すことではないか」と話した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年10月21日

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