学校が牧場や農園に!中止の宿泊行事、行った気分になれた 新宿の小学校で「バーチャル女神湖」音響や香りをプロが演出
「学校でもできることを」子どもの声にSNSで賛同
「学校でもできることをやりたい」。長野県立科町にある女神湖への1泊2日の宿泊行事が中止になった7月、子どもたちから声が上がった。
5年生2クラス計48人の担任2人は8月上旬、夏休みの宿題として企画してみてはと提案。子どもたちからは、行き先だった長野県長和町の牧場からアイスクリームを取り寄せたり、乳搾りやブドウ狩りを工夫して“体験”したりするアイデアが次々と寄せられた。
住田有羽(ゆう)君(11)は「教室を女神湖のような空間にしたい」とビデオレターを作り、母親を通じて香りの専門家に送った。すると、SNSなどを通じて賛同した音響や香りの専門家ら25人が協力してくれることになった。
「自然の音…本当に行ったみたい。想像以上にすごい」
イベントは、9月28日午前9時前から午後3時すぎまで「総合的な学習の時間」として、教室や体育館などで実施。子どもたちは9つの班に分かれ、各イベントを担当した。
持参の弁当を囲んだ昼食時は、川のせせらぎや鳥の鳴き声など、実際に女神湖で収録した音が教室内に流れた。住田君は「教室の上からも下からも自然の音が聞こえて、本当に女神湖に行ったみたい。想像以上にすごい」
住田君の思いを聞き、女神湖周辺の音を録音するなど音響をサポートした会社員の上村忠明さん(52)は「子どもたちの前向きな姿に大人も本気で応えたいと思った」と話した。
手作りの星空、焦げるにおい漂うキャンプファイヤー
昼食後は、長和町の牧場から、子どもたちが取り寄せたアイスクリームを味わった。校庭の藤棚では、長野県産の巨峰を洗濯挟みでつり下げて「ブドウ狩り」も。段ボールに牛の絵を貼ったパネルに、乳に見立てた水入りのビニール手袋を付けた「乳搾り」では、BGMに牛の鳴き声が響く中、子どもたちからは「搾っている感じがする」と歓声が上がった。
「プラネタリウム」では、教室を暗くしてカーテンに光る絵の具で作った星を飾り、ブラックライトで照らした。子どもたちは寝転がって「夜の女神湖」に見立てた手作りの“星空”を見上げた。「キャンプファイヤー」は、跳び箱と赤い布やビニールテープで炎を作って表現。専門家の助言を得て、焦げるようなにおいが漂うように演出した。
新型コロナの感染防止で、宿泊行事などを中止する学校が相次ぐ中、担任の曽我明香(さやか)教諭は「子どもたちがゼロからアイデアを出し、主体的に取り組んで形にできたことが良かった」。鯉沼桜子さん(11)は「あれも駄目、これも無理と言われて悲しい気持ちになっている子に、楽しいことを考えると実現できることもあると伝えたい」と話した。