隅田川のそばにあった「アリの街」とゼノさんを知っていますか 地元有志が台東区に絵本寄贈

太田理英子 (2021年11月11日付 東京新聞朝刊)

佐々木洋人庶務課長(右から2人目)に児童書を寄贈した北畠啓行さん(同3人目)、ポーランド広報文化センターの関係者ら=台東区役所で

 戦後に東京都台東区の隅田川西岸に存在した戦災者の生活共同体「アリの街」の存在を地域の子どもたちに知ってもらおうと、地元有志「アリの街実行委員会」などが9日、街を舞台にした絵本など児童書7種140冊を区に寄贈した。

戦災者の生活共同体 ポーランド人修道士が支援

 実行委によると、アリの街は1950年、隅田川にかかる言問橋の北側に誕生。戦災で家族や家を失った人たちの共同体「蟻の会」が「蟻のように助け合って共同生活をすれば必ず自力で更生できる」を信条に、廃品回収で生計を立てた。1960年に都に立ち退きを求められ、江東区の埋め立て地に移転した。

 街でポーランド人修道士のゼノ・ゼブロフスキーさんが住民の支援活動に尽力したことにちなみ、実行委は今回、ポーランド広報文化センター(目黒区)とともに本を寄贈した。ゼノさんの伝記のほか、街で暮らして奉仕し、「アリの街のマリア」と称された北原怜子(さとこ)さんの生涯を紹介する絵本などをそろえた。

子どもたちと触れ合う修道士ゼノ・ゼブロフスキーさん(アリの街実行委員会提供、撮影年月・場所不明)

 本を受け取った台東区教育委員会の佐々木洋人庶務課長は「アリの街、北原さん、ゼノさんの存在を子どもたちに知ってもらい、語り継いでくれたら」と話した。本は今後、区内19の小学校の図書室などに置かれる予定。

 実行委代表の北畠啓行(ひろゆき)さん(81)は「怜子さんの平和の活動、ゼノさんの人道、博愛主義にも理解を深めてほしい」と期待する。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年11月11日